Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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星はかがやく。 今夜もこの寒空の中で夜間現金輸送の仕事をしている若い音楽好きの友人のことを想う。 現金輸送トラックを運転しながら筑波へ向かう高速道路の路面をすべるように。300メートル先の未来を見つめながら、ビートルズとか中村一義や小沢健二のことを話したのだっけ。 あの道、夏には、あちこちの自治体が花火大会をしているのを眺めながら窓をひらいてたばこを吸ったのだっけ。
未来を見つめながら、という行為は、今、行われていて、 過去に聴いたそれらの音楽たちは語られながら、今、聴かれようとしているかのように。
師匠、「ノア・クレシェフスキー/テープ音楽集1971〜1972」■、わたしもここ数日聴いておりました。奇遇です。
マークターナーとクンヴーが参加した『Transition Sonic / Matthias Lupri Group』はいいところがなかったな。0点。 高橋悠治のプレイズジョンケージも、私的に堕してて0点。 クリスチャンフェネスの『ヴェニス』は営業戦略上の工夫しかなかった。でも美しいので、5点。 サースティーイヤーでのクレイグテイボーンはうなづける。見よ、■これだけの表現能力のある強者たちが抑制を効かせて睨みあうだけで高水準のジャズ盤になってしまっているではないか、さすが、と唸るべし。7点。 工藤静香の「抱いてくれたらいいのに」が有線でかかる。うおおお。懐かしいが、この旋律の過激さ、音階の絶妙、さすが後藤次利!で8点。 デビッドチュードアが音を鳴らしててジョンケージが朗読している2CD、9点。 おざけん『LIFE』、10点。高橋悠治のバッハ、ゴルトベルクも、10点。
10点が最高点。加点的に考察。採点するといいこともあるけど失うものもおおきいのは当然。 高柳昌行の66年録音のタンゴ演奏『THE SMILE I LOVE』(高柳昌行g、三戸部彰vib、荻原栄次郎b、日野元彦ds、佐藤敏夫gというメンバー)は、ほらね、6点。 やっぱライブで接してみたいサンボマスター、『サンボマスターは君に語りかける』は7点。 うーん、それぞれ、やはりジャンルとしての採点が基準となるみたいです。ところがジャンル未定義とか定義不能な音盤があって、そこがおもしろいと個人的には。ジャズとして、即興として、とは測定できない名盤が多数あるのは経験的にはわかってるのだけど、なんとも。
去年謎めいた編集CDR交易をしたあやちゃんと師匠には、って、まだふたりかよ、これからこれから、には、最大級の友情のエールを!
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内田樹さんの著書『先生はえらい』の中に、コミュニケーション、沈黙交易についての秀逸な考察があります。
わたしがひとりで音楽を聴くことができないのは、ひとりでは出会えない音楽がそこに存在するからかも、です。相手の審美や言いたいことが予想できてしまうと、その交易は魅力を失ってゆきます。わたしたちの耳が神さまになる必要なんてなくて、多様性に開かれた“界”に舞う、あなたと舞いあう、謎に向かう快楽を最初の傷口にして。そういうもんじゃないでしょうか。音楽とおなじように。
名盤の定義は、内田樹さんが定義する古典への言及 “古典といわれるほどの書物は、小説であれ哲学書であれ、読者に「すみからすみまで理解できた」と決して言わせないような謎めいたパッセージを含んでいます。これはもう必ずそうです。構造的にそうなんです。“ を参照したいけど・・・、音楽はまた違うかな。どうなんだろ。しかし、これほどの炯眼を示す内田樹さん、読んでよかった。
謎を含んでいる傑作と言えばですね、ここ数年わたしが折りに触れ耳をそばだててしまっているブノワデルベックのピアノソロ『Nu-Turn』■はかなりの名盤。ケージとヨーロッパが痙攣を通じて交感しているのだ。
ボヤンズルフィカルパシチの『トランスパシフィック』■ようやく入手して聴いたです。これも9点は堅い。すごいよ、ボヤンのピアノは。謎めいてはないけど。
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うそうそ、みんなうそ。よろこびもかなしみも、みんなゆめのなか。 はしるはしるとおしば、うたううたうとおしば、ひかるひかるとおしば、みんなみんなとおしば、とおしばのまーく。
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