Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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わたしの耳の師匠にオフコースの『ワインの匂い』を聴かせていただく。
鈴木康博のハーモニーに対する感覚は、当時のニューミュージックシーンにあって突出していたことが納得させられた。 鈴木康博は当時ギタリストとしても相当なレベルにあったものらしく、楽理もカルト的に習熟していたもので、オフコースの成功は決して小田和正ひとりによるものではないと師は力説された。まさにそうである。小田和正主導になったオフコースは、サウンドに翳りや深みが欠如している。「さよなら」以降のオフコースはメロディーメイカー小田だけが肥大し、やがて小田はソロに転向した。
師匠いわく、オフコースの最高傑作は『ワインの匂い』である。
『ワインの匂い』と『ジャンクション』は、高校1年のときに、となりの席のとも子ちゃんにカセットでプレゼントされた重要な作品である。 カセットのケースの中はイラストの紙がきれいに折り込まれてて。曲目なんか便箋に手書きだぞ、便箋に手書き。
思い出すぞ。 「ね、途中まで一緒に帰らない?・・・」と、出し抜けに言い放った下校時のふいに二人だけになった教室。 「・・・うん。ちょっと待って・・・」ととも子ちゃんは言った。 あわててカバンに教科書を詰め始めたとも子ちゃん。みるみる真っ赤な顔になったとも子ちゃん。
キター!!
やがて。ふたりとも掃除当番じゃない曜日には互いに待ち合わせて一緒に帰るようになった。 そして、ぼくの部屋に遊びに来るようになっら。おっと、とちった。来るようになった。
そんで、わしはクイーンIIのLPをターンテーブルに乗せて「ネヴァーモア」をかけて雰囲気を盛り上げて、何度も何度も盛り上げるのだが。 そのたびに間の悪い小学校2年生の妹がわしの部屋に闖入してくるのであった。「おにーちゃん、くらいところでなにしてるのー?」
とも子ちゃんへのほっぺたへの初キッスが何度この妹によって阻まれたことであろうか!27年ぶりに仕返ししたいぞ。
ほっぺたへのキスは1度だけ達成された。しかし、とも子ちゃんは困った顔をしていた。
時は流れて。23さいになったわしは、北海道のどこかの博覧会でコンパニオン姿のとも子ちゃんにふいに呼び止められたのである。「ただくん!ねえ、ただくん!」。パビリオンの制服に身をつつんだとも子ちゃんだった。「2年生になってから、わたし、悪い子になっちゃって、突然くちをきかなくなって、ごめんね」と言った。ちょっとたどたどしいくちびるの動きがどきどきさせた。
「じゃあ、いいこになって、くちでなにしてくれるのか」とは、さすがに当時純真な貴公子であったわたしは言わなかったが。で、その後の展開がどうなったかはここでは触れない。
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