Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2004年01月28日(水) |
まだ「Feel Myself」・ミスチル『シフクノオト』4月7日発売・「マンフレッド・アイヒャーへの公開書簡 若林恵」・『FME』 |
・・・昨夜帰宅してから8時間は坂本真綾の「Feel Myself」ばかりを聴いています。 この曲は6分56秒です。とても7分もあると思えません。ちょうど5分のところで、空中に意識が完全に飛びます。
そこから聴こえてくる鐘の音はアルヴォペルトの『タブラ・ラサ』(ECM1275)、マンフレット・アイヒャーがニューシリーズを構想し数年かけた第一作である『タブラ・ラサ』の「ベンジャミン・ブリテンの追悼歌」に鳴り響いていた、オーケストラの残響音が消え去ったあとになっても響き続けたあの鐘の音でありますし、最後の最後に効果を聴かせるギターの音は、ケティル・ビョルンスタの『海』(ECM1545)で鳴り響いていたテリエ・リピダルのギターを想起するものです。 >以上、かなり重症な妄想聴取であることを予めご了承ください このギターを弾いているのは今堀恒雄、ティポグラフィカ(今堀恒雄・菊地成孔・水谷浩章・外山明ら)で知られる天才です。ミュージックマガジン2月号に今堀恒雄さんの記事(P76)がありますー。
坂本真綾97年のデビューアルバム『グレープフルーツ』の1曲目、です。 20日の日記に書きましたが、ほんと、菅野よう子のライジング、勃興、世界への告知を果たした、すばらしい楽曲・サウンド構成です。
ミュージックマガジン2月号、表2のカラー広告は菅野よう子が音楽を担当するアニメ『攻殻機動隊』、表3のカラー広告は今堀恒雄が音楽を担当するアニメ『ガングレイヴ』、です。 アニメの潤沢な資金が日本の天才を育てているという事実を認識しなければなりません。 いっぱい売れよう、とか、高い芸術性を示そう、とか、そういうあぶない欲望はかならず音楽に現れてしまうもので、アニメのサントラという、創造に限界のないシチュエーションがここにあるという事実。
ほんとねー、世界に冠たる日本、というコトバはぜったい使わんけど、日本のジャズ(この作品たち■「70年代日本のフリージャズを聴く!」全三期 30枚 Review )といい、日本語がかち得た表現形態としての浪曲といい、なんつうかねー、日本というコンセプトは要らんよ、仮に日本語が流通する文化圏といった場所、としての、「ここ」で日本語で脳みそを機動させているぼくは、とりあえず、日本語でこうして書いてみておりますがに(どこの方言だに?)。
▼ うああ。ミスチルのニューアルバムのニュースが!■ミスチルのサイト・シフクノオト 『シフクノオト』4月7日発売。 友だちと話していて、「至福の音」「至福ノート」とふたつの意味だね、とか。 「こないだ図書館でね、小学4年生くらいの男の子が端末の検索画面にひらがなで「みすたーちるどれん」と入力していたんだ、わたし、ねえねえどの曲が好きなの?って尋ねたかったけど、へんなおねーさんに思われてしまうからやめたの、横浜マリノスのジャージを着ていたのよ。」 ぼくは、それはほんとうに美しい光景に思える。 「ヒーローになりたい、って歌っているのに反応したのかなー」 「希望の数だけ失望は増える、に反応したとか(笑)」「あはは」
1.言わせてみてぇもんだ 2.PADDLE 3.掌 4.くるみ 5.花言葉 6.Pink〜奇妙な夢 7.血の管 8.空風の帰り道 9.Any 10.天頂バス 11.タガタメ 12.HERO
タガタメ、HERO、というエンディング曲目・曲順を見ただけで、鼻のあたまがじーんとしてしまいます。
▼ 『エスクァイア日本版3月号』(1月24日発売)のユーロ・ジャズ特集。
48ページにフランスを代表するサックス奏者、いやマルチプレイヤー、ミシェル・ポルタルが!いでたちのカッコよさ。 「スペインのフランコ政権打倒、アメリカの公民権運動、そしてパリの五月革命。あの頃は、反体制的な政治行動とフリージャズの精神がピタリとリンクしていたんだ」と語る。じゃあ、今はどう思われていらっしゃるのでしょうか、ポルタル様。 ポルタルの70年代のライブアルバム、というのがあって(友だちに貸したまま行方不明だー)、ほんと入手困難気味なんだけど、これが、すげーのなんの、って、90年代初頭のルイ・スクラヴィスが持っていたライブでの“パッション的旋律の数珠つなぎ状態”が世代のバトンを継承したものだって、確信できるほどのライブなんだ。 >簡単に言えば、ミルコクロコップ状態、という感じです >余計にわからなくなるかも ぼくはこのライブのCD化にこそ、ポルタルの理解がかかっていると思う。あと、実際にライブに行くとかね。
49ページは、フランソワ・テュスク、アンリ・テクシエ、スティーヴ・ポッツのライブ写真だし!51ページにはスティーヴ・ポッツの紹介が!
▼ 「マンフレッド・アイヒャーへの公開書簡 若林恵」
80ページ目から始まる、このECMについてのテキスト、アイヒャーのインタビュー内容を織り交ぜながら、描かれる、 これほどの訴求力のある、読む体験。このテキストはECMの音楽を聴く時間のように、意識が旅をする。 ECMのジャケットに潜む「ノイズ」の指摘なぞ、ほとんどわたしはこうべをたれる気持ちでした。 アート・ディレクターの「バーバラ・ヴォユルシュに捧ぐ」と題されたコラムもコラージュも素晴らしいの一言に尽きます。
「私たちの音楽は、〈明晰さの探究〉と呼ぶことができます。ルシディティ(lucidity)、クラリティ(clarity)、トランスパランシー(transparency)、そしてミステリー(mystery)。それがECMの音楽なのです」―― Manfred Eicher 「真に豊かな〈音楽〉、われわれを感動させ、またわれわれが本当に味わうことができる唯一の音楽とは、どんな理性や分析も追放する〈夢〉の〈音楽〉であるだろう」――アルベール・カミュ
このカミュのテキストの引用は、若林恵さんによるものです。 ECMの音楽を紹介するというページに、鮮烈なイメージと、なんともかけがえのない存在感を与えています。
“どんな理性や分析も追放する〈夢〉の〈音楽〉”、武満徹もミシェル・ドネダもアストル・ピアソラもキップ・ハンラハンも、そしてECMも。
▼ ミュージシャンとリスナーのためのメディア構想委員会(仮称)として7人の集まりがあったので、わたしは自分にとっての昨年のジャズベスト1である『FME』のライブをトーストして持参した。みんなのけぞって輸入盤屋を徘徊し始めることだろう。花咲かじじいは今夜もてんぱっている。
『FME』 (ODL10007) OKKA DISK Limited Edition Series Features: Paal Nilssen-Love / Nate McBride / Ken Vandermark Limited release of 760 copies
(いまだ書きかけのレビューテキスト>ノルウェー大使館確認による発音確認により「ポール・ニルセン=ルーヴェ」と改訂しました) これはすごい演奏だ。ノルウェーで人気の高いジャズ・ユニットである“アトミック”でのプレイからは想像が難しかったものの、怪人ラウル・ビョーケンハイム(ギター)らとの“スコーチ・トリオ”、これは昨年のロヴァ耳ディスクアワードの6位に入れたが、ここではさらにすさまじいパーカッショニズムを見せるのがポール・ニルセン=ルーヴェ(Paal Nilssen-Love)!である。2年前の7月、ノルウェーのモルデ・ジャズ・フェスティヴァルではパット・メセニー、アリルド・アンデルセンとのトリオで出演して聴衆の喝采を浴びている(!)俊英、29歳。端的に言って、ヨン・クリステンセンが辺境にあって深化させたものを、ニルセン=ルーヴェはジャズの本流に持ち込んだ、と、断言する。 どの現代的ジャズの推進者たち、たとえばウイリアム・パーカー、ジョン・ゾーン、ブラッド・メルドー、ティム・バーンなど、彼らとのセッションまでもを想定したいレベルのドラマーだ。その真価が聴ける。 Okka Disk からの760枚限定生産盤。
Paal Nilssen-Loveポール・ニルセン=ルーヴェ
ノルウェーの俊英ドラマー、29歳、すでに40枚を越えるCDに参加している。 父親もプロのドラマーであり、両親はStavangerでジャズクラブを経営していたという。 そこで、トニー・オクスレイやビリー・バング、デヴィッド・マレイ、ロナルド・シャノン・ジャクソンの演奏に触れた。 彼にインスピレーションを与えたのは、トニー・オクスレイ、アート・ブレイキー、ジョン・スティーヴンス、ポール・ローフェンス、エルヴィン・ジョーンズ…、さらにアル・グリーン、さらにアル・ジャクソン、さらにさらにミーターズ(The Meters)、トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ(Toots And The Maytals)、リー・スクラッチ・ペリー(Lee Scratch Perry)。
元旦に届いた英『WIRE』誌2004年1月号では表紙にクレジットされて彼の特集ページがありました。
そしたら、委員のひとりから反対にニルセン=ルーヴェのこのCDを「これもいいよー」とハイコレされて、「おお同志よー」と、ちと感激。 Schlinger / Paal Nilssen-Love - Håkon Kornstad (2003; Smalltown Supersound; STS077CD)
ネットで検索したら・・・すでにこんなページまで作っておられる方もいて、ジャズはここにいきておろうぞー。 ■Paal Nilssen-Love
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