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2006年02月19日(日)
「休日の家」へ

朝早く、坂町漁協の「牡蠣祭り」へ足を運びました。もちろん、焼き牡蠣、牡蠣フライ、牡蠣汁をたくさんいただく。旬の幸を堪能。









そして、どうしても訪れたい場所へと向かった。それは・・・
「休日の家」
大田川上流の河岸ちかくにある木造の小屋のような建物。
破天荒な人生をおくられて、4年前、91歳で亡くなられた奇才の建築家「今中敏幸」さん。「赤い屋根」「山荘HANAKI」となど、素晴らしい建物を建てられ、放浪の旅をし、ジャズを愛していた。「休日の家」は、この安佐の山あいの大田川河岸に建つ、今中氏が住まわれていた8棟の家。その一つ。現在も、今中さんの奥さまが、店を営まれている。昨年の台風による大田川の氾濫によって、この家も濁流にのまれてしまう。しかし昨年末には、営業を再開された。

積み上げられた石の階段を上がると、築30年以上の、深い色の木と赤い屋根の山小屋の店のドアが待っている。開くと、奥さまと、長男の男性のお2人が店で佇んでらっしゃり、あたたかく迎えていただきました。店内は、重厚な木の風合い、年月がその色を深く深くさせている。本当に山小屋の中という感じ。木枠の窓からは、山と大田川が見える。店内中央には、ストーブ。奥には、スピーカー。オイルランプ・・・ご夫婦が大好きだったジャズが流れている。「赤い屋根」と同じく、木のベンチが窓側に作りつけられている

お2人に、この建物の歴史、昨年の水害の時のこと、そして、生前の今中さんのことを、詳しく語っていただいた・・・

昨年の台風の日、朝は、まだ道路まで水が来ていなかったのに、夕方には、一気に店の中まで浸水、店内のエアコンのあたりまで水がきてしまった。(8棟のうち1棟は、井口港まで流れてしまった)これで水害は3度目。でも、この土地を離れることはできない・・・気落ちしていた奥さまであったが、お店を再開する際、全国各地の、このお店のファンの方たちが100人近く訪れてくださったそうです。
今回の台風のことを、奥さまは「亡くなったあの人が、ここでまた一からやりなおせ、まだやめるな!ということだったのでしょう・・・」と、笑顔でおっしゃっていた。「これから、ぼちぼち、店を元に戻していきます」「こうやって、訪れてくださる人がいるのですし、やめることはできない」と、語られる奥さまは、本当に芯の強い、凛とした人のように思えた。











今中さんの、生前のお話もたくさんしていただいた。とにかく、ここで書ききれないくらいの波乱万丈の人生。僕が、「赤い屋根に、何度も訪れていて、素敵な建物だと思っていましたので、ここへぜひうかがいたかったんです」と、お話すると、奥さまは、「あの人が建てた建物には、どれも、ぬくもりがあるんです」と。それは、本当に感じます。実際訪れて、その木のぬくもり、建物の素朴さ、そして何にも妥協を許さなかった今中さんの意思が詰まっている。

「あの人のいきざまなんです」
今中さんの建てた家のことを、奥さまはそう語れてた。とてもとても胸を熱くさせられました。

お話をうかがっていると、店に男性のお客さんが。なんと、10年振りにここへ来られた昔の常連さん。奥さまはほんとうに喜ばれて・・・ますます昔のお話が盛り上がりました。ご主人は、ロマンチストでもあったそうで、だしかに荒い気質の人ではあったけれど「あの人には、かわいらしいところもあったんですよ。人間、歳をとっても、かわいらしさを失ってしまってはだめよ」と、おっしゃっていたのが、印象的でした。


「休日の家」のお店の由来をうかがうと、「あなたの休日」という意味だとおっしゃられていた。なるほど・・・30年の歴史の中、ここで出会って結婚されたカップルもおられたりと、いろんなお客さんのことへと、お話は移っていった。それを聴くにつけ、まさに、たくさんの人の人生がここに凝縮されて、たくさんの人が、この店と、今中さん、奥さまを愛されてきたのだと感じました。

ほんとうに、素敵なお話をうかがえて、涙が出るくらい感動!!そして、店を後にする時も、「ほんとに、どうもありがとうございました。また、おいでくださいね。お元気で・・・」と、やさしい笑顔で送り出していただきました。こちらこそ、ありがとうございました。


広島には、今中氏が建てられた建物は40近くある。「赤い屋根」のような、喫茶店も広島に数多くあり、それを、これからひとつひとつたどっていこうという想いが、いっそう強まったのでした・・・今中さんの「生きざま」をたどりに。



コバルト

広島在住
文筆とカメラとここちよい暮らしが好き
ホームページ⇒http://www.geocities.jp/cobaltblue21jp/

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