Land of Riches


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 2019年01月16日(水)   トラウマ 

昨年9月にりんたこで先行が行われた「画狂人 北斎」に行ってきました。
会場は新国立劇場の小劇場。宮本亜門さん演出のガチなストレートプレイです。
和田さんが座組(と言っても6人だけ)の最年少なのは初めて見ました。

not原作ものも初めてかな? 和田さんの出演作でお花OKなのって珍しくて、
ロビーでは一際大きなご両親からのも含め、どの出演者よりも大量の花が
贈られているのを確認できました。グッズも和田さんのブロマイドたくさんでしたね。
今回は現代の青年とあって、パッと見るとただの和田さんブロマイドですし。

作品には絵を描くために他のほぼ全て(人間としての常識とか人付き合いとか)を
投げ捨てた北斎や父に振り回される娘の応為を取り巻く江戸時代の人々以外に
現代で絵に携わるキャラが二人出てきます。画家にしたいという両親の欲望で
英才教育を受けながら才がなく、親と同じ職業(美術研究家)になってしまった男と、
画才がありながら東日本大震災の津波で恋人を失い、絵を描く気力を失い
研究家の弟子という体際になっている若者。この若者・凜太を演じるのが和田さんです。

110分で表現するためには人生をデフォルメ表現するしかないのか、
現代の二人は強烈なトラウマ持ちで、それが行動原理として描かれます。
北斎の最も著名な作品は言わずと知れた波。それで悲しい想い出をえぐられる
凜太に対し、師は忘れろと幾度も励まします。これ、若くしてがんで亡くなった
友人の記憶を抱き、ゆえに「笑って生きていきたい」と常々言っている
和田さんにとっては、公演ごとに胸をえぐられる心地なんじゃないでしょうか。

作中では応為も父をかばうために恋した相手が獄死しており、
大切な相手を失ったもの同士として凜太と幻想的な邂逅を果たします。
北斎は少年時代から眼に監視されているという被害妄想を抱いていましたが
(この辺、彼をフォーリナーに設定したFGOが絶妙すぎると唸る)
それは北斎が真に対象を見れなかった証であり、腑分けで内臓を見た彼は
老いてようやく真に絵を描ける心境になったと逃亡先の小布施から江戸に戻ります。
戻ってきた父を責めながらも、父には絵を描くことしかできないと再確認する応為。

凜太はかつて画家として大成して恋人を食べさせてやりたいと思っていたのを
思い出しながらも、自分のために絵を描く、だから南三陸に帰ると師に決別宣言。
劇として伝えたかったのはこれなのだろうなと。数日後のりんたこでも言ってましたし。

マイクも使わないガチのストレートプレイなので、4列目という
2.5次元ではありえない良席(大体和田さんの出演作は後ろから見た方が
早い席でしか見たことない)だったのに、既にセリフが聞きとりづらく。
でも、綺麗とか元気が出るというだけではない、人の醜さや辛さも
がっちり描いているところが芸術としての舞台なんだろうなと思いました。

単純にまとめると、悪くは無いけど、前に座ってた人みたいにチケットいくつも
持ってリピートまではしたくないかな…という作品でした。

2019.1.20 wrote


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