Land of Riches


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 2017年08月30日(水)   物語を盛り上げるために簡単に命が捨てられていく 

退社できるかやや不安でしたが、どうにか舞台版「君嘘」見てこられました。
アイアシアターって裏(NHK)側から見ると本当に仮設ですね…。
相変わらずの隣が揺れるだけでシートがわさわさ揺れる低ランク劇場です。
久々でした。

私は基本的にマンガを読まないので、マンガ・小説・アニメ・実写映画と
さんざんメディアミックスされている「君嘘」に和田さんが出る舞台版で
初めて触れたんですが…何度もメディアミックスされるってことは
人気ある作品なのだと思いますが、乱暴に結論を言うと私には合いませんでした。

少女漫画かと思いきや月刊少年マガジンだから少年漫画なんですねこれ。
音楽に対するリスペクトもあまり感じなかったけど、wikipedia見たら
作者さん作品やるまでクラシックに興味なかったみたいで…なんとなく納得です。

メディアミックス歴豊かなだけあってか、開演前に隣の人が友人に
あらすじを延々と喋っていて凄くイラっとしたのですが、終わってから彼女が
舞台版はショートカットし過ぎ、と不満を述べていたので、
お陰様でストーリーの補完が出来てしまうという塞翁が馬状態でした。なんだそれ。

物語をまとめると、母親を喜ばせたいだけでピアノをやっていたのに
その死がトラウマになって弾けなくなった天才少年が、その彼に憧れ、
嘘をついてまで接近しようとしたヴァイオリニストの少女に恋をして、
演奏会に復帰するも少女は病死してしまう…というもの。
誰も幸せになれないエンドのために人二人も殺すのかよ…と思いました。

少年のライバルたちも少年を倒す一念だけでピアノを弾いていて、
作者さんは人間は薄暗いエネルギーがないと動かないと考えてるのかな?と思いました。
そもそも母が鬼のようにピアノを仕込んだのも、自分が死んでしまうから
少年が食べていけるだけの技術を身につけさせたい、というもの。

少年の幼馴染がヴァイオリニストの少女に嫉妬で苛立ちを覚えたり、
綺麗な動機(美しいものをそのまま愛でる、みんなで楽しむ)で
動いてる人が誰もいないんですよね。現実っぽいのかもしれませんが。

原作マンガだと細かいエピソードがもう少しあるみたいなので
(その存在を隣のお喋りさんが教えてくれた)ここまでイライラしないのかもしれませんが、
たくさんメディアミックスされるほどの作品には思えませんでした。残念。

舞台版の売りとしてプロのピアニストとヴァイオリニストによる
劇中演奏があったんですけど、ストーリー上、負の感情が高ぶり過ぎて
演奏会の途中で演奏を止めてしまうというシーンが複数あるのに、
よくこの仕事を引き受けたと思うぐらいには本物のプロでした。
(終了後の演奏会で、そんな演奏をしたことは一度もないと当人も言うくらい)

詩人と言われるショパンが母国の革命を想って作った情熱的なバラード、
大好きなんですが、これも劇中では激情を表現するだけのツールになってましたね…。

登場人物は中学生なんですが、舞台でやるのは無理があると思いました。
いや、むしろ舞台でやって違和感がないテニプリが異常なだけ!(笑)
和田さんも来月には26歳。可愛い人ですけど、さすがにブレザーは苦しいお年頃。
でも、そんな歳の人が着るブレザーだからこそのキュートさはありました。
客下り演出で2列前の通路をに来た時は、その横顔に見惚れてしまいましたもの。
(刀ステの客下りが続くか分からないけど、長谷部であの距離だったら生きて帰る自信がない)

和田さんの演じる渡くんは主人公の友達で、女の子が大好きの軽薄な性格。
(サッカー部なんだけど和田さんは元・野球少年だからボールを手で扱う)
だけど好きなものがたくさんあるから自分も輝いていられる、
男が何かをできるかは女の子が教えてくれる等、独自の哲学を持っていて、
それをたまに言うのが名言っぽく聞こえるのが不思議なキャラです。
りんたこで言っていた「星は夜輝くんだぜ」もとてもいい台詞でした。

ヴァイオリニストの少女は、憧れのピアニストに近づくため、
ピアニストの友人である渡くんが好きだと嘘を表明して二人の少年に接近します。
渡くんは少女の嘘と友人の恋慕に気づき、ひょいひょいと見舞いに通っては
二人の距離を縮めようとします。ピアニストの幼馴染も感情をこじらせていくので、
結果的には作中でほぼ唯一と言っていいマイナススパイラルに落ちない存在。
彼がいなかったら、もっと後味悪くなっていたでしょうね。

ぴあで4次先行まで案内があって、いまだに当日引換券がメールで案内されますが、
それもやむなし…としか言いようがない、惜しい観劇になってしまいました。

2017.9.3 wrote


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