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 2013年06月23日(日)   噛み合う歯車 

今日は諏訪部さんの出演される朗読劇「MARS RED」へ行ってきましたよ!
(6/24追記:諏訪部さんは先週半ば喉トラブルに襲われ声が出なくなったのに、
初の朗読劇で穴を開けるわけにもいかず、注射や投薬で無理やり出演していたことが判明。
最近よくコンディション崩されてる気がする…ご自愛下さい><)
まさかのアニメイトでDVD発売らしいので、ネタバレ防止のため改行。






















会場は、シルク・ド・ソレイユのために建設された、舞浜アンフィシアター。
そのため、音や光のみならず、宙吊りや火炎放射までが可能となっています。
入った時、妙に視界が曇っていて、コンタクトレンズが汚れたのかと思ったんですが、
単にリハーサルでモクモクやっただけでしょう…それくらいスモーク連発でした。

背景として歯車がセットされ、諏訪部さんもファンの方に指摘されたのでしょうか、
固有結界という語をツイートされてましたけど、ストーリーを思えば、
世界の下僕(守護者)であるサーヴァント・アーチャーと、
大日本帝国の下僕である本作の吸血鬼は歯車的存在として、近しいのかもしれません。
(だけどアーチャーの歯車は一つたりとて噛み合ってないところもポイント)
あと、永遠に生きていると魂が腐る、というテーマも(これは、むしろ普遍的ですかね)

キャスティングは主人公とヒロインが俳優&女優さんで、脇役をキャリア豊富な
声優さんで固めました…といったテイスト。石田彰さんのマッドサイエンティストとか、
諏訪部さんの毒舌軍人とか、鈴村健一さんの風来坊とか、いかにもって感じですね。
装束は大正時代を舞台にした劇らしく、男性陣は軍服(諏訪部さんは髪もオールバック!)姿。
これに白衣を羽織ってる石田さんが、本当にハマり役でした。

生演奏と視覚的演出、そして轟音で聴覚を奪われがちな時間にあっても、
石田さんの声はとても通って聞き取りやすく(白状すると他のキャストさんは
聞き取れない時があった)さすがだな…と。マッドキャラやらせたら、
この人の右に出る声優さんはいませんね。実に楽しそうに研究成果を語ってました(笑)
途中に設けられた休憩時間でのアナウンスも見事でしたよ。

諏訪部さんの演じる前田は、珍しく年齢相応のキャラ…と思ったんですが、
オフィシャルサイトのキャラクター説明を読むと、そうでもないのかな?(^^;
小杉十郎太さん演じる山上と同期設定だから、結構歳いってると思ってたんですが…。
ちなみに仲が悪いと書かれていますが、どちらかと言えば腐れ縁的な関係でしょう。
「バカが」ってきつい口調に思い遣りを込められるのは、さすが諏訪部さんですよ。

物語は、たまたま耐性があったがゆえに、生きながらほぼ無敵の
(微妙に不死身と同意ではないところがミソ)吸血鬼と化した4人が、
人間の理性を維持するのに苦しみつつ、理性のない、けれど4人より強い
吸血鬼との戦いを重ねていく…という展開となっています。

死ににくい吸血鬼は、歳月を重ねるにつれ、自分の存在に対して正気を保てなくなります。
まして、戸籍が整備されつつある近代において、吸血鬼の位置づけは難しくなる一途。
よって、長く生きている吸血鬼たちは、自分たちらしく消えていこうとしています。
(この物語では、太陽の光≒紫外線を浴びると灰になって死ねるという設定)

一方、軍事力として吸血鬼に着目した人間は、より強力な吸血鬼を
てっとり早く確保しようと策を凝らします。欧米列強に追いつけ追い越せと
勤勉さを発揮してきた大日本帝国が手にした秘策は、死者を吸血鬼と変える手段でした。
(これをたまたま見つけてしまったのが、石田さん演じるマッドサイエンティスト)

誇り高く消えていきたいと願う、長命の吸血鬼。
少しでも人間らしく在りたいと願う、最近噛まれ人でなくなった吸血鬼。
戦場で無謀な命令に従わされる若者の命を無駄にしたくないと願う、陸軍の偉い人。
偉い人に命を救われた過去ゆえ、彼の為なら命も惜しくないと考える者。

埋め難い価値観の相違が、諏訪部さん演じる前田の末路となって浮かび上がります。
前田は過労から病に倒れ、吸血鬼による戦力充実という志半ばにして死んでしまいます。
そんな前田を、恩人である偉い人・中島(高橋さんas)は吸血鬼にしてしまいます。
 #この展開で真っ先に連想したのが、『屍者の帝国』。
理性のない吸血鬼と化した腐れ縁を目にした山上(十郎太さんas)は
中島を責め立てますが、中島は彼の本望だと主張して譲りません。
結局、山上は前田を道連れにして消失する道を選びます。

最後、科学の進歩により、新米吸血鬼である主人公はヒロインを救う…という
オチだったんですけど、物語の本題からすると、とってつけたような
ハッピー?エンドかなぁ…という印象を受けました。
(マッドサイエンティストが人を救うことが出来た、っていう意味のハッピー)

何が本望か、というのは当の本人にしか分からない事で、
極端な話、死んでしまったら無意味というか…ヒロインが口にする、
死んだけど見守っているなんて意味がない、という言葉が重いです。

とりあえず天ぷらが食べたくなる話でした(笑)
 #山上の好物が天ぷら。でも吸血鬼になったので食べられない。
 #前田と山上は学校同期時代、よく一緒に食べに行ったという設定。
 #道連れ消失の際、お約束的に意識を取り戻した前田が食べに行きたがる。

作中の吸血鬼で長命な者は900年近く生きていて、魂が腐っていくのに
耐えられなくなりつつなってるんですけど、こう考えるとアーチャーというか
士郎って精神力強すぎだと思います。あの待遇で狂わない程度の正気を保てるって
半端ないというか…1000年どころじゃないはずです、アーチャーの体感した時間長って。


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