Land of Riches


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 2002年12月25日(水)   貴人の風格 

冷えた体を引きずって風呂場へ行くと、湯船に布巾で包まれた柚子が浮いている幸福。
私は家族こそこの世で最も信じるに値しないものと考えていた時期もありましたが、
近頃では、自分はまだまともな家庭で育ったんだと感じることが多いです。いまだに
どう足掻いても赤の他人以上に近い関係であることを断ち切れない存在―血縁の特殊性に
馴染めたとは言えませんが。幸福な家族…私が思い描いていた理想は、と思い起こすと、
やはり放任主義に対する反発が見え隠れします。一家団らん。けれど、そんな光景が
見られる家庭はもはや一般論としても少数派なわけで。放任されたがゆえに現在の
私のパーソナリティが構築されたのは、もはや否めない事実です。プラスマイナスは別にして。

探し求めていた「雪風」は、ようやく名駅高島屋の11Fで平積みになっているのを発見。
最初、続編「グッドラック」は雪風の世界に馴染めたらまた別に買おうと考えていましたが、
ハヤカワJAの冷遇ぶり(名駅11Fはグインが全巻あったような…すごい充実でした)を
痛感したので、ここぞとばかりに購入。先日、ようやく「幸福論」を読了し、まだ
「アルジャーノン」が読みかけなのですが、どうやら私はアルジャーノンより雪風の
世界の方が興味を持てるようです。読むペースが速い…。アルジャーノンは優越感と
劣等感が織り成す人間模様ですが、雪風は身近なそれとは違い、非常に非現実的な話です。
主人公は各種レビューで冷酷非情と口を揃えられてますが、読んでみると登場する
人物の中ではまともというか、感情を持っている方だと感じます。とにかく自我を
持つ機械たち(主人公の愛機である雪風含む)が理解不能にかっ飛んでますから。
雪風ワールド的には、理解という行為も所詮人間の範疇でしかない、となるのでしょうか。

私はサンガ(というか角田サマ)を見に豊田まで出向いたのですが、我が家の居候
ポンペイが「竜太が見たい!!」とわめくので、久々に連れ出しました。視線を集めましたけど。
こんな時期の平日ナイター、人が来ないのは予測の範囲内ですが、一応グランパスの
試合なのだから3315人は寂しい(特にバックは私でも数えられそうな少なさ。多分
100人いなかった)です。天候不順が報じられていたため(実際は降らなかったのですが)
初体験の屋根クローズ。明るさといい声の響きといい、インドアサッカーのようでした。

"Road to UAE"改め"Road to ATHENS"(五輪マーク付き)幕を捧げられている角田サマは
攻撃大好きっぷりをあまさず披露。「お前いつからMFになったんや!」という野次を
頂戴してました。いや、だってペナルティエリア内でワンツー受け損ねたの誰かと思ったら
角田サマだったり、とにかく前へ出過ぎ(笑)やはりオフェンスの人間ではないので、
繰り出すラストパスの精度(むしろアイデアかも)にはかなり難ありなのですが、
とにかく上がるのが好き・攻めるのが楽しいというのがにじみ出てました。もちろん
だからといって守備が破綻したりはまずしないのですが。グランパスは助っ人ツートップ不発。
これなら竜太を先発させろ、とポンちゃんじゃなくても言いたくなります。原竜太さんは
そのスピードでいまや観客を一番沸かせられる選手になったのですから(本当に)。
彼を助っ人ツートップの後ろへ置くのはもったいないですよ。とにかく角田サマの
歯ごたえある敵ではなかったのです、少なくともこの試合では。

前がかりな角田サマの対極にいるのが、キャプテンにしてDFリーダーの手島さんです。
二人でサイドへ相手を追い込みボールを割らせた時、角田サマが手島さんをぽんぽんと
叩いてて、そういう関係なのか(いや角田サマにユニフォームを着ている時、上下関係など
ないのは確認しなくても分かりきった事実ですが)と思ったりしてたんですけど、
一番強く感じたのは、松井さんが黒部さんの巧みなポストで落ちたボールをボレーで
見事に叩き込んだ後、かなり離れていたにもかかわらず角田サマが祝福に行ったのに対し、
手島さんは大きく手を叩きつつも、(その瞬間における)現在進行形で下がって
試合再開に備えたのです。手島さんが最後の砦としてそびえていたからこそ救われた
シーンが(角田サマと直接関係はないのですが)少なくとも2回はありました。
CBにはいろんなタイプがいて、それぞれの持ち味がありますけど、サンガの、ベストの(泣笑)
3人は見ていてなかなか面白いものがあります。CB好きな方は是非(いるのか?!)。

サンガは他にも楽しい部分がいろいろあってオススメです。冨田さんのスピードとか
俊輔さん去りし後、Jで最もファンタジスタという言葉が似合うであろう松井さんの
テクニック(巧い…無駄なまでに巧いのです)とか、チソンのレベルとか。

でも、他チームを見ていると、アントでは(比較的)当たり前である勝利への欲求が
必ずしもプレーヤーが自然に備えているものではないことに気づきます。今日のグランもそう、
レイソルはもっとひどいです。勝ちを目指す、勝つために最善を尽くす、最後まで諦めない、
当たり前のようで実は当たり前でなかったり。プロなら常にベストであってほしいのですが。


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