Land of Riches
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“約束”というものに私が異常に弱いのを、どうして知っていたのでしょう? その二文字で医者へ引きずられてばかりの私。
Promise.
自分の中ですら定まらない気持ち―近づいたり遠ざかったり、燃え上がったり冷めたりする想い。 それは、幻を見つめているから…現実化するか、霞と消えるか、定かでないターゲット。
御殿場から帰ってきて、雑誌を読み返して…違う選手のインタビューを舐めるように読んで、 行くんだ、行くんだと自分へ強く言い聞かせてきた、強迫してきた目的地・アルゼンチン。 たとえ“彼”がいなくとも、望んだ舞台で闘う仲間たちを、この目で、この、目で…。 そのためなら何かを踏み台にしても、誰かを傷つけても、仕方がないとさえ覚悟決めてました。
他の誰でもない、あたしの、アジアユースからの時間は、全部、そのために、それだけのためにあったのに。
こんな弱った…鈍った状態でも確信が持てることは大抵があがなえない真実で、 仕事終わりに上司から注意されるのも“読めて”いたあたしが、医者からもらう答えは予想がついてました。 その答えを受け取るべく、仕向けられたトラップだと―無力感に覆い尽くされながら、宣告を待ったのです。
何もしないのが最上の治療法ならば、地球の裏側への出撃はこれ以上ないぐらい無謀な行為で。
次の大会に回せばいいじゃない、と先生は笑いました。そう言うしかないでしょう。 だけど、言われた方の頭は真っ白で、とてもそんな先の出来事など描けるはずもなく、 それなのに、通告者側は他の言葉を持たず…きっと、どこかで繰り広げられた光景なんだとぼんやり思いつつ。
やめといた方が―その一文節だけで、熱くなる目頭を抑えつけるのに必死になるあたし。
イチドシカナイノ。そんなこと言ったら、先生と向き合う時間だって、こうやってタイプする時間だって、 長い長い歴史上で一度きりしかないけれど、ワールドユース・アルゼンチン大会は一度しかなくて、 それに出られるU-20はもう二度と結成されることのないチームで…。
何もかもが流されて、支えてくれていたはずの笑顔さえ色褪せて。 ただ今日が終わり、次に来る明日をどうやって、どうにか過ごそうとしか思えなくて。
…いつになったら冷静にU-20の話ができるんでしょう? マスコミやファンが誰もそんな話題を口にしなくなった頃?
とりあえず、ツーロンも本大会もライブ中継を無視してひたすら眠ることにしました。 それが取るべき選択肢だと言われたから。治さないと…“あの子”みたいにはなりたくないから。
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