「ガムを食べた。」 DiaryINDEXpastwill
2003年03月27日(木) 家主さま

今日は1日中家主様のところを回っていた。
契約書等の書類やお金、鍵を届ける仕事。
8件くらい回っただろうか。
ほとんどが初めて行く家だった。
もう、地図のコピーを片手に初めての場所に行くのには慣れた。
わざわざコピーなんか持ち歩かずに、頭に入れて行くことも多い。

今日印象に残った家主さんは2組。

まず、独り暮らしの足を悪くしたお婆ちゃん。
1度尋ねて、戸を開けて「こんにちわー」と言っても出て来ない。
何故かやけに人なつっこい猫がたっぷり。
不在にしても、戸締りしてないし不用心だなーと思いつつ、
とりあえず猫に触りまくって触りまくって触りまくって触りまくって
触りまくって触りまくって触りまくって触りまくってから退散。

昼近かったので適当にパンとコーヒーでも食ってから、電話。
電話してから行くようにしないと、出てきて貰えないんだなとわかった。
独り暮らしのお人よしのお婆ちゃんの自己防衛手段だ。
玄関にセールスお断りのステッカーが貼ってあった。

改めて訪問して、猫のことを聞くと、
何でも捨て猫がかわいそうでついつい飼ってしまうとか。
捨て猫を拾うことが知れてか、あるとき一気に10匹くらい置いていかれて、今、12匹くらい居るそうな。
毎日毎日魚をあげないとダメなんだって。
「魚代、馬鹿にならないでしょ?」と言うと笑ってた。

おばあちゃんのアパートはボロボロ。
横にお墓はあるし、洗濯機は置けない(おばあちゃんが洗濯してくれる)しで、なかなか人が入らない。
それでも「今流行りの板張り、フローリング?あれしましたから綺麗ですよー」「駐車場の料金は取ったことないんですよー」と言う。
家賃はびっくりするほど安い。

こういうアパートに入る人はいい人が多いのかな?
おばあちゃんの人柄だろうか。
主に学生が多いそうだけど、退居して社会人になってからも、
猫のためにエサ買って持ってきてくれたりするんだって。

俺、機会があったらこのアパートに誰か入れたいと思った。



もう1組は40代の夫婦。
駅の近くに3棟くらい賃貸マンションを所有してるのかな?
田舎とは言えマンション、アパートは供給過剰気味。

それでも、彼らのマンションは入居率100%。
俺の家も賃貸マンションやアパートを所有しているんだけど、
けっこう部屋が空き始めてる。
なので、「100%って・・・凄いですね!?」
そう言うと、語ってくれました。

彼らがマンションを相続した時点で、駅の傍にあるという利点はあったものの、築15年くらいでまぁまぁ古くけっこう部屋も空いてたそうな。
夫婦は話し合った結果、自分達で出来ることは全部やろうと決めた。

まず相場を見ながら家賃を見直す。
そして、マンションの簡単なパンフレットを自作。
それから、「よろしくお願いします」って不動産屋を回った。
それによって2件程度だった、取引のある不動産屋が10件くらいに。

それから、室内を徹底的に掃除した。
例えば備え付けの鏡なんかは全て外して、家に持って帰りピカピカに磨く。
タオル掛けなんかも外して、跡が付いた壁を綺麗にする。
コンセントのカバーなんかも綺麗なものに取り替える。
さらに、これらを取り付けてあったネジが錆びてたりすると、
ホームセンターへ行って新しいネジを買って来る。
こういう細かい所を徹底的に綺麗にしていって、
今ではホームセンターの店員さんと顔見知りだったりするそうな。
壁紙等、素人では出来ない部分は業者に頼む。

さらに、空室状態ではどうしても殺風景で冷たい印象なので、
カーテンを付けて、ホテルの様に「人」の字に飾りつけ。
後で入居者の方がカーテンを取り替えるのは構わない、と。
これで温かい印象になるせいか、人が入ってくれるようになったとか。

賃貸物件の部屋というのは、
長い間空けておくと空き癖がついてしまうらしい。
カーテンを取り付けることによって、
外から見ても空き室には見えないという利点がある。
消費者というのは、見ていないようでいて見ているみたい。
<あそこ、ずーっと空いてるけど、何かあった部屋なんだろうか?>

一見、たいした事じゃないように見えるカーテンの取り付け。
でも、「あるとき入居者の部屋に入る機会があって、中を見ると、私達が取り付けたカーテンの色に合わせて部屋の中にある色んなモノの色がコーディネイトされているのを見て、嬉しくてたまらなくてね。」
本当に嬉しそうに話していた。

入居率100%には訳がある。

家主さまの中には、毎日のように会社に電話してきて、
「今日はどうや?お客さん来たか?頑張って入れろや。」
と命令口調で言う方もいる。
極端な例では、ダミーのお客様を会社へよこして、
自分の物件を故意に紹介していないんじゃないかと調査する方も。
さらに、弁護士を通して訴訟をほのめかすFAXをよこす。

それはその家主さまにとっては営業努力なんだと思う。
だけど、そこまでされると実は仕事の邪魔だったりする。
それにウルサイ家主ということで、営業マンの気分としてもやる気がうせる部分がある。

そして、相場を見ずに家賃設定を自分の都合のいいように固めてしまっている家主さま。
お客様を物件へ案内して、扉を開けると手入れがされてなくて匂いがしたり、雨漏りしていたり、ホコリやゴミが散らかっていることもある。
そんな物件は、不動産屋の営業マンがいくら紹介したところでお客様が断る場合が多い。

印象に残ったこのご夫婦は物凄く謙虚で、俺みたいな新米の営業マンがお使いに訪れただけなのに、えらい丁寧に挨拶して下さる。
物件そのものを何とか良くしようという努力もさることながら、不動産屋の気持ちまで考えている。


今日は物凄く勉強になった。
俺、かなり口下手な人間で、それは欠点だけど、
真面目に応対していればいろいろ話してくれる人もいるもんだと知った。
聞いてあげると喜ぶ人って結構多いもんね。
俺からすると自分が話さない分、どんどん話してくれると嬉しい。
「話をじっくり聞く」というのは俺の長所にできるかも知れない。


あー、今晩パチンコで4万6千円も勝って
気分良くビール飲んでて酔ってます俺。

なんか話まとまらないけど、今日はいい日だ。

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