橋本裕の日記
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2007年06月18日(月) |
食い物にされた老後保障 |
社会保険番号に統合されていない、いわゆる「宙に浮いた年金」が5000万件もあるということが問題化したのは、民主党の長妻昭議員が、去年の6月16日に国会で追及したことがきっかけだった。日曜日に放送された「サンデープロジェクト」によると、このとき長妻意議員は2343万件という具体的な数字を上げたそうである。(下記のサイト参照)
「文藝春秋」7月号に掲載されている岩瀬達哉との対談によると、長妻議員は岩瀬さんの書物などを読み、もともとは年金が給付以外に浪費されている問題に関心があったのだという。ところが一般の人から、「自分の年金記録が消えた」という手紙を受け取った。議員はその意味がわからず、直接その人に面会して、年金記録消滅の事実をはじめて知ったのだという。
さっそく社会保険庁や厚生労働省に掛け合ったが、歯牙にもかけられなかった。しかし、長妻委員はその後も調査を行い、ねばりつよくこの問題を訴え続けた。国会でも追及したが、それでも政治問題化することはなかった。一介の野党議員がいくら騒いでも、厚生労働省の役人は微動だにしなかった。マスコミも反応しなかった。
厚生労働省はようやく今年の2月になって、公文書で回答して来た。何と「宙に浮いた年金」が5000万件もあるのだという。そこで長妻議員は2月14日の衆議院予算委員会で、この件についての「徹底調査」を求めた。しかし、安倍首相は、「国民の不安を煽り立てる」として、この調査を拒否した。
しかし、5月下旬になって、官邸をあわてさせる出来事が起こった。内閣支持率が10ポイントも落ち込みをみせたのだ。そしてこれまで沈黙を守ってきた新聞やテレビが年金問題を報道し始めた。これを境に、与党の自民党も危機意識を高め、官邸や厚生労働省の対応や雰囲気も一変した。
自民党は民主党の菅直人議員が厚生大臣だったこと、年金管理の杜撰さは社会保険庁の労働組合の労働サボタージュが原因であるなどと責任転嫁を図ろうとしたが、あえなく挫折した。
社会保険庁の労働の実情を見てみると、現在に至るまでシステムエンジニアをひとりもおかず、プログラムのい製作管理はすべて外部に丸投げ状態だった。こんなずさんな労働体制で職員に年金業務をしろというほうが問題である。問題を職務怠慢に矮小化することはできない。
こうした状態を放置したのは厚生省の歴代の幹部であり、さらにいえば長い間自民党厚生族のドンであった橋本龍太郎であり、彼なきあとこの地位を引き継いだ小泉潤一郎だ。しかも丹羽雄哉自民党総務会長も、石原伸晃自民党幹事長代理も、有力な厚生族だし、安倍首相もそうだ。
つまり現在の内閣や自民党は年金を食い物にしてきた厚生族の巣窟だといってもよい。したがってこの問題には現在の自民党と執行部と内閣がもっとも深くかかわっている。この事実を否定したり、言い逃れをすることもできないし、下手をすると政権のアキレス腱になりかねない。
年金特別会計には年間21兆円もの保険料収入が入る。厚生族議員はこの巨大な利権を使って自分たちの権力を築き上げてきた。その結果が「グリーンピア」をはじめ全国に256ケ所もある年金施設である。これらの建設のために、1兆5700億円もの年金積立金が流用された。
その余沢はこれらの年金関連施設や企業に天下った役人にもおよんでいる。1985年に社会保険庁は二人の課長の連名で「紙台帳」を破棄してもよいという通知を出しているが、長妻議員がその一人について調べてみると、彼は旧年金事業団、ついでNTTデータの役員に収まっていたという。
国家の礎は「安全保障」と「社会保障」である。そして「社会保障」の礎は何と言っても私たちの老後の生活を支える「年金」である。これを磐石にたもつことが、国民の国に対する信頼をつなぎとめる要件であり、国の国民に対する責務でもある。安倍首相は「愛国心」や「道徳」を説く前に、憲法に定められた政治家としての本務をしっかりと果たすべきだ。
(参考サイト)
「2007/6/17 サンデープロジェクト 年金問題 長妻昭 vs 大村秀章」 (1/4) http://www.youtube.com/watch?v=DA6gXYoVzzY
「2007/6/17 サンデープロジェクト 年金問題 長妻昭 vs 大村秀章」 (2/4) http://www.youtube.com/watch?v=fJkesrszhbM
「2007/6/17 サンデープロジェクト 年金問題 長妻昭 vs 大村秀章」 (3/4) http://www.youtube.com/watch?v=FxqOVAUJXmU
「2007/6/17 サンデープロジェクト 年金問題 長妻昭 vs 大村秀章」 (4/4) http://www.youtube.com/watch?v=pCfzwvfw71w
(今日の一首)
一杯のグラスの水を飲み干して はじまる一日今日は雨の日
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