橋本裕の日記
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2007年06月14日(木) いのちの原景

 顕微鏡ではいろいろなものを観察したが、そのなかでも印象に残るのは「血液」や「精子」を眺めたときだろう。とくにじぶんの「精子」を観察したときは興奮したものだ。それは中学3年生のころではないかと思う。夏の暑い日だった。

 まずは精子を採取しなければならない。はっきりした記憶は残っていないが、クラスの可愛い女の子や近所の幼馴染の少女のことでも思い受かべて、せっせとひとり孤独な作業に励んだのだろう。

 採取した精液を大急ぎでスライドグラスの上に一滴貼りつけてカバーガラスをかけ、対物レンズを近づける。反射鏡の角度を変え、調節ねじを操作してピントを合わせる。そうすると、そこにおたまじゃくしの形をした小さな生物が無数に泳ぎまわっているのが見えた。

 わあ、すごいな、と素直に感動した。いつもなら母や祖母を呼んで来て見せてやるのだが、物が物なので、そういうわけにはいかない。感動を共有できないのが残念だった。

 人の男子の精巣では,10才くらいから精子を作り始め,1日約5千万〜数億個ずつ,死ぬまで作られる。男子が一生のうちに作る精子の数は,1兆〜2兆個にもなる。1回の射精で放出される精子の数は、数億個にもなるという。運がよければそのなかの1個が卵子と結合するわけだ。

 顕微鏡で精子を観察していると、やがて活発だったおたまじゃくしの活動が衰えて、ほとんど動かなくなった。そして精子の死骸とおぼしきもので一杯になった。自分の分身がこうして次々と死んでいくのを眺めるのは淋しかった。

(今日の一首)

 わが精子あふれている顕微鏡
 わが分身と思えばいとしい


橋本裕 |MAILHomePage

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