橋本裕の日記
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2007年06月09日(土) ピンホールカメラの不思議

 むかし、小学校の頃に、ピンホールカメラを学校で作った。ボール紙で立方体をつくり、一方の面に針で穴を開ける。そして反対側を四角の窓をつくり、そこに不透明のセロハンを張ればできあがりである。そうすると不思議なことに、そこに天然色の風景がさかさまになって浮かび上がってくる。

 カメラと言っても実際に印画紙に写すのではなく、すりガラスやセロハン紙に映して眺めるだけだが、しばらくはこれに夢中になった。なぜ、風景が、それも逆さまになって映し出されるのか、先生は黒板に図を書きながらこんな説明をしてくれた。

「一人の人間が立っているとします。人間の頭から出た光線は、穴を通って暗箱のセロハン膜の下側に当たります。どうように人間の足元から出た光線は穴を通り抜け、膜の上側にあたります。外界と暗箱に、穴を頂点として上下が逆さまになった相似形の二つの三角形ができます」

 ピンホールは穴を大きくすると象がぼやけてしまう。だからシャープな映像を写すには、穴を小さくすればよいが、そうすると光の量が弱くなって、映像が暗くなってしまう。このかねあいがむつかしい。

 先生の説明によれば、基本的にはレンズもピンホールと同じような働きをするのだという。ただ、レンズの場合はピンホールとくらべて、直径が何十倍も大きい。だから何十倍も明るい風景を映し出すことができる。人間の目はこのレンズを使った暗箱構造になっている。そしてセロハン紙が人間の目では網膜だという。これは人間の目の構造についてのとてもわかりやすい説明だった。

 レンズがピンホールとおなじ働きをするというのも大きな発見だった。そうしてそうなるのか、小学生の私にはよくわからなかったが、このことがきっかけになって、私は祖母の老眼鏡からレンズを取り出して実験をするようになった。

 これは祖母からたちまち苦情がきた。そこで私は小遣いを蓄えてレンズを買うことにした。そして5年生の夏休みの課題に、そのレンズで望遠鏡つくり、学校に持って行った。ボール紙の筒には黒いエナメルが塗ってあり、見掛けは立派な天体望遠鏡である。私の天体望遠鏡は担任の先生によって教室の片隅に飾られた。私は誇らしくてうれしかった。

(今日の一首)

 風景がさかさに浮かぶ暗箱の
 不思議な世界ピンホールカメラ


橋本裕 |MAILHomePage

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