橋本裕の日記
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2007年02月22日(木) モズの夫婦

 これは妻から聞いた話だ。面白いので日記で紹介しよう。妻が毎日通っている近所の畑に、モズが夫婦でやってくる。お目当てはミミズである。野菜作りをしていて、畑を掘り返すとミミズがでてくる。それをモズが目ざとく見つけて、すばやく妻の手元から奪っていく。まさに目にもとまらぬ早業である。

 奪っていくのはいつもからだの少し大きいオスの方である。彼はすぐ近くの枝先まできて、熱心に妻の仕事ぶりを見詰めている。これにたいして、メスのほうはもう少し離れた枝先に止まって様子を見ている。

 オスはミミズをくわえると、近くの枝先に戻る。すると、メスがピー、ピーと猛烈に鳴き始める。羽を震わせて必死にオスに声をかける。オスはミミズをくわえたまま、横目でうらめしそうにメスをみる。メスはますます必死である。

「なにをもたもたしているの。はやくミミズをよこしなさい」
「僕が苦労してとったんだぜ。僕が食べるのが順番だろう」
「駄目。まず、私から食べるのよ」
「あとで持っていくからさ」
「そんな薄情者だったの。もう絶交よ」
「わかったよ、今もって行くからさ。そう怒るなよ」

 こんな按配で、オスはしぶしぶ餌をメスのところにミミズを運ぶ。メスは満足そうにそれを平らげる。オスはまた近くに来て、次のミミズを狙う。そして二匹目を手に入れるのだが、同時にメスがけたたましく鳴き始める。オスはおろおろするが、やはりメスのところにミミズを持っていく。妻はこの様子を見ていて笑いが止まらなかったという。

 私も様子が目に浮かぶようで笑ったが、おなじオスとして、少し複雑な思いになる。けなげなモズのオスが、自分自身の姿に重なるからだ。妻のように腹の底から笑うわけにはいかない。

 ペアになる決定権はメスが握っているようだ。そこでメスの気を引こうと、早春の頃にオスは求愛のダンスを行い、けたたましく鳴く。モズを百舌鳥と書くのは、ホオジロやウグイスなど、さまざまな鳥の鳴き方をまねるためだ。オスは二枚舌ならぬ百枚舌を使う。それだけ必死である。

(今日の一首)

 早春の畑でモズがミミズ捕る
 メスに運んでオスはおあずけ


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