橋本裕の日記
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セブの英語学校で私はジセール先生にマンツーマンで英会話を習った。そして英会話の勉強と称して、私は彼女をたびたびセブ市内のレストランに食事に連れだした。もっとも若いフィリピン女性と二人切りでは何か起こらないとも限らない。そこでジセールと食事をするときには、私はいつも日本人のYさんに来てもらった。
彼女はカナダやアメリカに滞在したこともあり、日本でもノヴァに通って英語の勉強をしていた。そしてノヴァの紹介でオーストラリアにも語学留学したこともあるという。この経歴を聞けば、かなりの英語ができると思ったが、ほとんど話せなかった。ジセールと話していても、どう答えてよいか分からなくなると、「どういうの?」と私の方に聞いてくる。
話せないが、相手が話している内容はわかるという。しかし、どうも自分からは話せない。学校の先生を生業としているくらいだか、シャイな性格ではない。むしろ単身セブに乗り込んでくるくらいだから、物怖じしない積極的な性格だ。
最初は英語の知識や経験が私よりもありそうな彼女が話せないのが不思議だった。しかし、その理由が次第にわかってきた。つまり、彼女はまだ英語を話す「コツ」を掴んでいないのだ。いくら英語単語や文法の知識があっても、それが活用できなければ宝の持ち腐れである。
大切なの、知識を蓄積することではなく、それを如何に活用するかということだ。その活用する方法を彼女はまず学ぶべきではないだろうか。それなのに、彼女は食事中も電子辞書をもちこんで答えようとしている。そこで、「haveとかtakeとかつかって、もっと易しい英語を話してごらん」とアドバイスした。
3週間がたち、私がセブに帰る日が近づいたので、「これまで何回も食事につきあってくれてありがとう。おかげでフィイリピンの先生とも食事をしながら英会話の勉強ができたよ」というと、彼女はこう答えた。
「私の方こそ、ありがたかったわ。shinさんが先生と話しているのを聞いて、なんだ、こんなふうに言えばいいんだって、わかったもの。shinさんが帰っても、私自分で先生を誘ってみようかな」
彼女のこの言葉を聞いて、彼女を誘ってよかったと思った。彼女も英会話をやさしく話す秘訣をのみこんで、英語で話すことが少し楽しくなったのではないだろうか。来年も是非、セブに来たいと言っていた。
今、私の手元に、竹村健一さんの書いた「基本19語の英語術」(カッパ・ビジネス)という本がある。少し引用しよう。
<イギリスのオグデンとリチャーズの2人の英語学者は、基本英語についての本の中で、日常会話の95パーセントが「リトル・ワード」と呼ばれるやさしい単語でできていると指摘している>
<スペリングを覚えるのに苦労するようなむずかしい単語は、すべてドブに投げ捨てよ。そして中学や高校で習った英語をもとにして、とくに基本19語のいろんな使い方、組み合わせ方で、ほとんど完璧に英語力を飛躍させることができる、このことを知ってほしい>
<あなたが英語で何かを言いたいときには、まずこの19語のどれを使って表現するかを考えていただきたい。たいていのことは用が足りるはずだ。このやりかたを覚えると、赤ん坊や幼児が、ごく自然に日本語をおぼえていくのと同じ過程をたどりながら、英語をモノにできるようになる>
この本は以前にある英語の先生に勧められて読んでいたが、今度セブから帰ってきてじっくり読み返してみた。そしてここに大切なことがすべて書かれていることに気付いた。これから英会話に挑戦しようという人、現在苦戦している人に奨めたい一冊である。
他に私が参考にしているのは、「中学英語をリサイクル、基本12動詞+α」(長尾和夫+マス・マーティン、すばる舎)である。これはgetやmakeなど中学で習う12の基本動詞に、onやoffなどの20個あまりの副詞や前置詞を組み合わせて、実用的な300個のフレーズを自在に作り出した文例集だ。「基本19語の英語術」を更にパワーアップしたものになっている。
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