橋本裕の日記
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2006年06月17日(土) 相続税強化ですべて解決

 私の父の墓のある福井の田舎は典型的な過疎の村である。しかし、その村にもダムができ、立派な道路が建設されている。皮肉なことに、ダムや道路工事による自然破壊で清流は涸れ、村は重要な観光資源を失った。そしてこのころから、過疎化が加速された。

 もっとも、私の家の親戚は、ダムや道路工事で土地を徴収され、その見返りとして数億円規模の現金収入を得た。正直に言うと、わたしの実家も数百万円の現金収入を得た。これによって、家を改築し、弟の結婚費用や父と祖母の葬式代をまかなうことができた。

 私の実家の場合は、所有する山林のほんの一部が道路建設で徴収された。しかし、本来の計画では道路のインターチェンジが置かれることになっていて、その場合は数千万円から1億円の現金が得られるはずだった。ところが一人の地主が反対したため、路線が変更され、わが家の山林は守られたが、現金収入を減じられたわけだ。

 ダム工事で丸ごと山を手放し、数億円を手にした親戚は、その後、田舎を離れ、福井市の近郊に大きな家を建てたと聞いている。その頃は私の周囲でも、そうした土地成金の話が持ちきりだった。私の実家もあと一歩で土地成金の仲間入りをするところだった。そうなっていたら、私も今頃は名古屋市内に一戸建てを持っていただろう。

 今では考えられないが、たとえば1991年の高額納税者上位100人をみると、そのうち86人までがなんと土地長者でしめられている。勤労所得よりもこうした不労所得の方が大きかったわけだ。

 不労所得が大きいと、経済的に大きな問題が生じてくる。それは勤労所得に比較して、不労所得の方が「貯蓄」にまわされる傾向が大きいからだ。借金は経済を活性化させるが、たんなる貯蓄は支出を萎縮させ、経済を停滞させる。

 バブルが崩壊したあと、GDPは低迷した。しかし、1990年代に410兆円も個人金融資産が拡大している。これはどうしたことか。秘密をとく鍵は、この間に政府の発行した360兆円もの「国債」である。つまり、政府の「借金」がそっくり、国民の財産へと転化している。「政府の借金は国民への贈与である」といわれる所以だ。

 こうしたメカニズムに国民が気付ば、どうしたら国の借金をなくすことができるか、その処方箋は自ずと明らかだろう。国家から国民に贈与されたこの「金融資産」を、ふたたび国家に返納して貰うのである。

 それでは、どうやって? その為に必要なのは、法律を変えるだけである。つまり、相続税を強化するのだ。1億円の金融資産を残して死んだら、その8割程度を国に返還してもらう。1500兆円の8割は1200兆円で、これではとりすぎだから、国内上場企業の株式に関してはこの基準を大幅にゆるめればよい。そうすれば、日本企業の株価も大いに改善するだろう。

 現在、日本で上場されている企業の株式時価総額は600兆円である。これは17年前の1989年の水準とかわらない。この17年間で世界の株式時価総額は4倍になっているから、日本のプレゼンスは1/4になったわけだ。企業買収の時代、時価総額の見劣りは国内企業にとっては致命的である。相続税の選択的課税強化は、国債償還だけではなく、株価対策としても優れている。まさに一石二鳥の妙手だ。


橋本裕 |MAILHomePage

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