橋本裕の日記
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2006年04月26日(水) フイリピンの子供たち

 今年1月にセブに英語留学したFさんは、サッカーが大好きで、セブで向こうの子どもに教えていたという。「僕はいつもこの時間ここにくるから、教えててほしかったら、いらっしゃい」と言うと、その少年は毎日のようにやってきたという。

 この話を妻が台湾旅行中にFさんの奥さんから聞いた。私は妻から又聞きして、「ああ、良い話だな」と思った。そして、自分の体験を思い出した。

 セブからバスに乗って、田舎町へ行ったとき、帰りのバス停で、近所の少年と少し会話をした。英語の発音のきれいな、賢そうな少年だった。たいした会話はしなかったが、私は何となく彼に親しみを覚えて、こんな息子がいたらいいなと思ったものだ。

 セブのホテルの近くを歩いていたときも、子供たちが寄ってきた。私が旅行者だと知って、お金をねだった。私は今、この子供たちに、何か与えてやればよかったと後悔している。お金を与えないにしても、たとえば日本の話を聞かせてやるとか、動植物や宇宙の話を聞かせてやるとか。子供たちとジュースでも飲みながら、さりげなく彼らの心を好奇心を呼び覚ましてやることはできたはずである。

 ある人から「里親制度」に参加しないか誘われ、「あしながおじさん」を思い出して、少し食指がうごいたが、ただお金を出すだけでは物足りない。物質的な援助とともに、身近にいてサポートし、人格的な交流ができれば、おたがいに楽しいだろう。

 現在のフイリピンは貧富の差がはげしく、一部の裕福な階級によって、教育が独占されている。たしかに田舎には田舎のよさはあるが、この田舎の良さが、どんどん破壊されていることも現実だ。これに対抗するには、庶民がもっと知的にも目覚める必要がある。

 先日、「mo more war」のMLのオフ会で、フイリピンに滞在している広瀬さんという私と同年代の女性とお会いして、少しプイリピンのことを聞くことができた。彼女はクリスチャンだそうだが、たいへんフイリピンが好きで、もう十年以上住んでいるらしい。たまたま日本に帰っていたので、オフ会に参加したそうだ。

 彼女によれば、フイリピンは田舎がとくにいいという。そこに住む人々は日本人よりはるかに人がよく、親切だということだった。フイリピンというと私たち日本人は、スラムがあって治安が悪く、危険なところというイメージがあるが、フイリピンの人たちはむしろ日本のことをとても危険な国だと思っているそうだ。

 日本のヤクザのことはフイリピンでは有名だし、かって日本はフイリピンを軍事占領し、おおくのフイリピン人を殺害したこともある。そうした歴史を多くのフイリピンの人は忘れているわけではないようだ。

 フイリピンの人の多くはキリスト教を信じている。宗教心の厚いひとたちだ。今度フイリピンへ行ったら、小さな村の、小さな教会を訪れ、その椅子に体をゆだねて、しばらくいろいろな瞑想にふけっていたいと思っている。

 名所旧跡を訪れるだけが旅ではない。どんな小さなささやかな世界にも、そこに生きる人々の歴史と哀感がしみついていて、静かに心を澄ませれば、何かが心を満たしてくれる。旅の楽しみは、こんなところにある。


橋本裕 |MAILHomePage

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