橋本裕の日記
DiaryINDEXpastwill


2006年03月27日(月) イチローの闘争宣言

 WBCアジアラウンドを前にして、セブ島で知り合った韓国の友人から「イチロー選手は韓国でも人気ですよ」というメールを貰った。大リーグで黙々とプレーし、礼儀正しくストイックなスタイルが韓国でも「アジアの星」として好感をもたれていたらしい。

 しかし、試合を前にして2/21に福岡ドームで行われた公式記者会見で、イチローは「向こう30年間相手が手を出せないほどの勝ち方をする」と発言した。この発言は韓国でも報道され、イチローに対するブーイングになった。私もこの発言はイチローらしくないなと思った。

 作家の嵐山光三郎さんが週刊現代4/1号の連載コラム「者の言い方」のなかで、このイチローの発言に触れて、「アメリカの野球界で闘ってきたイチローはアメリカ人になっていたんですね」と書いている。イチロー選手の発言はきわめてアメリカ的だというのだ。少しだけ引用してみよう。

<これはイチロー選手だけの問題ではありません。アメリカ社会で成功したビジネスマンは、みな同じ傾向があります>

 イチロー選手の発言はアメリカ社会ではふつうかも知れないが、アジア社会では違和感があるのではないか。現に韓国では激しい反発が起こったし、こまめにメールをくれていた韓国の友人もその後、メールをくれなくなった。

 イチローの発言は日本でも話題になったが、「これでチームがひきしまった」「闘志がわいた」といった好意的なものも多かった。これはイチローだけではなく、日本人そのものがアメリカ的になってきたからだろうか。

 小林信彦さんが週刊文春3/30号の連載コラム「本音を申せば」で、最近の中国や韓国に対する発言をみると、日本人の品格がどんどん落ちてきているとしか思えないと書いている。これも引用しておこう。

<2006年にもなって「ドロボー中国」などというヒステリックな見出しを週刊誌で目にすると、一瞬、凍りつく。中国のやっていることの善悪ではなく、反応があまりに下品だからだ。戦時中でさえ、一部便乗ジャーナリズムは別として、こんな文字を活字にはしなかった。国家の品格とか品位とかいうことがいわれるが、小泉・竹中コンビが5年間でやったことは、日本の品位を「ぶっこわす」ことだけだった>

 福沢諭吉は近代西洋文明に学ぶことの重要性を説き、「脱亜入欧」というスローガンもここから生まれたが、同時に「私がこれまで説いてきたのは、ただ国民の心を上品にすることが目的です」(福翁自伝)とも語った。日本は韓国を下してWBCの初代のチャンピオンになったが、そのお祭り騒ぎの輪の中にあっても、私は韓国の友人のことを思わずにはいられなかった。


橋本裕 |MAILHomePage

My追加