橋本裕の日記
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財務省の発表によると、国債、借入金、政府短期証券をあわせた国の借金が、05年度末に800兆円をこえたそうだ。この他、政府が保証した特殊法人の借入金が55兆円以上あるらしい。これらの額がふくらみ続けているという。
もっとも国は金融資産も持っている。内閣府が発表した「国際経済計算」から推定すると、2003年末の総額は480兆円ほどではないかという。その内訳は社会保障基金が254兆円、内外投融資が136兆円、外貨準備が90兆円ということになる。
菊池英博さんは「増税が日本を破壊する」(ダイヤモンド社)のなかで、「財務省はいつも祖債務だけを公表して、危機を煽っているのではないかと思われる」と書いている。たしかに昨日の新聞報道を見ても、政府の保有する金融資産についてはまるで触れてはいない。菊池さんはこうも書いている。
<政府がGDPに相当するほどの金融資産を保有しているのは、日本だけである。ここに日本の財政の特徴があり、純債務(借金−金融資産)でみない限り、日本の財政事情を的確に把握することはできない>
じつは、国は金融資産を保有しているだけではない。公有地や公共施設、道路や橋、通信施設などの公共インフラといった巨大な資産も保有している。これらの資産価値がどのくらいになるのか、これも発表されていないが、お金に換算すれば何千百兆円にものぼるはずである。国の財務状況は借金だけではなく、そうした資産も考えなければならない。
たとえば、年収500万円の家計にたとえれば、800万円の住宅ローンを抱えているが、銀行預金や株の金融資産が480万円ほどあれば、純借金は320万円である。しかも、手元には「住宅」という不動産がある。この資産価値が1000万円だとしたらどうだろうか。すべてを清算しても、まだ680万円ほどの財産があるわけだ。
国の財務状況を考えるとき、財務省は借金ばかりを問題にするが、ほんとうは資産まで考えなければならない。これと反対なのが、家計の財務である。昨日の報道によると、個人金融資産の合計は05年末にとうとう1500兆円を超えたという。しかし、個人金融債務については触れられていない。じつのところ住宅ローンや消費者ローンの合計は380兆円ほどあるようだ。
なお、昨日の朝日新聞は国の「借金831兆円」という見出しの記事と並べて、「民間法人借金839兆円」という見出しの記事も載せている。前年度に比べて、8兆円ほどふえているが、朝日新聞は民間企業の借金については好意的にこう書いている。
<バブルの後処理にめどをつけ、前向きな経営に乗りだしていることが借金の面からも裏付けられた。金融機関からの借り入れは、04年には11.1兆円のマイナスで返済が上回っていたが、05年には2.3兆円のプラスに転じた。民間企業が設備投資などのため新規借り入れを増やしたとみられる>
非金融法人企業の金融資産残高も03年の734兆円が04年には758兆円になっている。05年にはさらに増加しているにちがいない。民間企業もまた負債と同時に巨大な資産を持っているに違いないのだが、このことは余り知られていない。しかし、正確な統計が存在せず、報道もされないからといって、資産が存在しないということではない。
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