橋本裕の日記
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| 2006年02月23日(木) |
東証は信頼を取りもどせ |
東証はみずほ証券の株の誤発注でシステム不全が明らかになった。そして1月にはライブドア事件で取引全面停止の事態に追い込まれた。こうした東証に対して、厳しい目が注がれている。松井証券の松井通夫社長も、週刊ポスト3/3号に「脆弱な東証と儲けすぎ証券会社にもの申す」という一文を投じている。
<東証がここ数年、何に力を入れてきたかわかりますか。自らの株式上場のことしか考えてこなかったんです。そのあげく、こんな事態を招いている>
東京証券取引所は非営利法人として1949年に設立された。これが完全民営化されて、2001年11月1日に資本金115億円の株式会社になった。
東証は証券会社や上場企業から徴収する負担金をその収入としており、営業利益は530億円もある。経営の基本方針には、「グローバル市場に相応しい信頼と魅力を創造。ITを積極的に活用する」と謳っている。しかし実態はどうだろうか。長く大蔵省の統制下にあり、トップは2004年に急逝した土田氏まで6代続いて大蔵省(財務省)からの天下りだった。
717名の社員がいながら、システムエンジニアは一人もいない。しかも30代後半の社員はそろって年収1000万円をこえる高給取りだという。東証の常識は世間の非常識といわれていた。民営化されたといっても形だけだったわけだ。
東証が使っているコンピューターは11年前の日立製だという。しかもすでに去年で耐用年数が切れているらしい。ITの時代にこんなおんぼろのシステムをだましだまし使っているわけだ。
ニューヨークやロンドンの証券取引所の最新のコンピュータはこの10倍は処理能力を持っている。これらが片道3車線の高速道路だとしたら、東証のシステムは一車線の一般道路にも劣る。これでは事故がおこらないほうが不思議だ。いかに東証が設備投資を怠ってきたかということである。
松井社長は東証ばかりではなく、自己売買で巨利を上げている証券会社の儲け主義にも疑問を呈している。
<かって証券会社は免許制で。『自己売買より委託売買優先』が大原則だった。投資家が優先で自己売買は二の次ということだ。この原則は免許制でなくなった今も残すべき精神ではないか。
さらに言えば、証券会社の自己売買は、個人投資家には持てない情報を持っている。板情報を上から下まで見られるし、手数料もかからない。これが同じ土俵に立つのはフェアではない。自己売買で儲けることに躍起になり、証券会社のシステムがトラブルを起こしたり、誤発注したりでは、元も子もない>
2005年度の株取引売買代金は1100兆円にも達したという。このうち350兆円が個人投資家で、その8割はネット経由だ。一方で、証券会社の自己取引は一昨年の180兆円から、昨年は300兆円と、個人投資家に肉薄している。
証券会社のなかには自己売買が9割をしめるものもあるという。個人投資家をないがしろにして、証券会社が自己取引に熱中していいものだろうか。こうしたことが続けば市場の健全性は失われ、個人投資家は証券市場から離れていくだろう。
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