橋本裕の日記
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2002年08月12日(月) 結婚まで

12.木洩れ日の中で
 ビールを飲み過ぎたせいで、頭がいたかった。市ノ瀬さんたち3人と別れた後、私は大学前から「金山橋」行きのバスに乗ったのだが、そのまままっすぐ西春のアパートに帰る気がしなくて、バスの車窓から、ぼんやり外を眺めていた。

 途中に「石川橋」のバス停がある。アパートに引っ越しをする前まで、そこから歩いて数分のところに下宿をしていた。引っ越しをしてまだ1ヶ月もたっていなかったが、何となく懐かしくなり、そこでバスを降りた。

 かっての下宿先の前まできたが、中に入るのはやめて、その前に佇んだだけで、山崎川の方へ歩いた。両側の堤が桜並木で、私の散歩道になっていた。晩春の午後の光が葉桜の若葉を輝かせていた。

 堤に沿って歩き、途中の橋を渡った。おきまりの散歩コースだったが、その頃から頭痛が消えて、頭の中まで風が吹いているようだった。その風がいくらかなま暖かかった。

  ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

 そんな古今集の和歌が心に浮かんできた。すでに桜の花の季節は過ぎていたが、木洩れ日の中を歩いていると、のどかな春の名残が感じられ、また初夏の気配も感じられて、こころが浮き立つようだった。

 途中の電柱に、「結婚相談、受けたまわります」などのビラが貼られていた。3月のある日、私はK子とこの道を歩いていて、その同じビラを見ていた。「結婚」という文字が、そのとき、妙に生々しく私の頭に焼き付いた。

 結婚相談所の宣伝は、K子を見送った石川橋バス停のベンチにも書いてあった。その同じバス停に、S子を送ったことがあった。S子の場合は、下宿でお互いに体を求めあった後だった。その同じベンチに腰を下ろしながらバスを待っていると、頭がすこしぼんやりしてきた。まだ、ビールの酔いが残っているのかも知れなかった。

<今日の一句> たのしみは 家族そろって 冷や奴  裕


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