橋本裕の日記
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2002年04月03日(水) 哀しいうぬぼれ男

 淋しい王様の住んでいる一番目の星をあとにした星の王子さまは、やがて二番目の星にたどりつく。そこには「うぬぼれ男」が住んでいた。「やあやあ、おれに感心している人間がやってきたな」と、男は王子さまを迎える。

 男はピエロのようななりをしていて、へんてこな帽子をかぶっている。人が彼を誉めたとき、男は帽子をもちあげて挨拶するのだという。「手をたたきなさい、ぱちぱちと」と言うので、王子さまが手を叩くと、帽子を持ち上げて挨拶してくれた。これは王様より面白そうだな、と王子さまは考える。

 しかし、手ばかり叩き続けなければならないので、やがてくたびれてきた。それに、この男の耳には自分が誉められる言葉しか聞こえない。だから、王子さまは相手を誉め続けなければならない。しだいに王子さまの拍手もおざなりになってくる。

「おまえさんは、ほんとにおれに感心しているのかね?」とうぬぼれ男。
「感心するって、いったい、それ、どういうこと?」
「おれがこの星のうちで、一番美しくて、一番りっぱな服をきていて、一番お金持ちで、それに一番賢い人だと思うことだよ」
「でも、この星にいる人ったら、あなたひとりっきりじゃないの!」
「たのむからね、まあ、とにかく、おれに感心しておくれ」
「ぼく、感心するよ」

 王子さまには、人に感心されることが、なんで、そんなに面白いことかよくわからない。とにかく、男を喜ばすために、できるだけ拍手をして、たくさん感心してから、その星を後にする。「おとなって、ほんとにへんだな」と王子さまは思ったまま、次の星へと旅を続ける。

 うぬぼれ男はどうして他人に感心されることを求めるのだろう。それは彼が自分自身に劣等感や頼りなさを感じているからだ。うぬぼれは、つまりは男の自分に対する自信のなさの裏返しなのだろう。自分で自分を認めることができないので、他人の賛辞をほしがる。うぬぼれ男は、そのことに気付いていない。ちょっと、哀しい。


橋本裕 |MAILHomePage

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