橋本裕の日記
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2001年12月24日(月) よりよき生のために

 自殺者が増えている。平成8年に22,436人だったのが、3年後の平成11年の統計では、33,048人(男23512人,女9336人)に激増している。原因として以前は病苦がトップだったが、現在は経済苦がトップを窺おうとしている。ストレスによる精神疾患も増えているようだ。

 自殺企図経験者は、男子で人口の1割以上、女子では2割以上いるという。なにをかくそう、私も自殺を企図したことがある。小学生の頃、屋根裏へ上がって、首をつってみたが、縄がほどけて失敗した。今では天の恵みだったと思っている。(詳しい事情を知りたい人は、「少年時代」をご覧下さい)

 高校受験に失敗した後、精神的に不調な時代があって、強迫神経症や視野狭窄などというけったいな体験もした。そのころ哲学や宗教や文学にこって、ありとあらゆる本を、手当たり次第に読んだものだ。カントやデカルト、ショーペンハウエル、ラッセル、ドストエフスキー、トルストイ、「歎異抄」などなど。

 悩みを解決するために、哲学や宗教や文学に救いを求めたのだろうが、結局のところ、そうした読書がどれほど救いになったか疑問である。むしろ悩みを深め、さらなる絶望へとあおり立てられたのではないかと思う。青年時代にあまり読書にはまるのも考えものだ。悩んでいる者に、安易に宗教や哲学をすすめてはいけないと思う。(その後遺症で、いまだに哲学青年気取りで、こんな文章を書いている)


 それでは、何が救いになったのかというと、一つには父に強制されて行っていた山仕事だろう。それから、修学旅行で行った長崎の原爆資料館での体験。悲惨な戦争を身近に知り、たいへん衝撃を受けた覚えがある。これを転機にして、私の思考が外に向くようになったからだ。

 その頃読んだバートランド・ラッセルの本に「幸せになりたかったら、心を外に向けることだ。社会のことを考えれば、じぶんの個人的な悩みなどいかにつまらないかわかるだろう」と書いてあった。この文章に目の覚めるような啓示を受けた。心の窓を思い切り外に開くことが大切だ。そうすれば新鮮な光と空気が自然に魂に流れ込んでくる。

 そのころ、映画「スパルタカス」を見た。高校時代に見た映画の中で、私はこの映画をベスト3の一つに数えている。人間とは何か、正義とは何か、そして愛とは何か、ローマの圧制に対する剣奴の反乱を描いた、この雄大な歴史的社会スペクタクルを見ていると、私の個人的な悩みなど実に取るに足りないように思われたものだ。

 現在、不況が深刻になってきている。倒産やリストラの話題ばかりの、暗い時代である。ますます自殺者が増加するのではないか心配だ。さらには、こうした苦しみから逃れようと、宗教に走る人も増えるのではないだろうか。しかし、こうした時代だからこそ、私たちは内向きになって、自己に囚われてばかりいてははいけないと思う。

 心の窓を大きく開き、社会の問題をしっかり直視すべきだろう。そしてその足場として、本物の宗教や哲学を探求すべきだと思う。個人の問題であっても、広い社会的視野に立って、実践的に深く考えることが大切だ。出家遁世も悪くはないが、その前になさねばならないことがある。


橋本裕 |MAILHomePage

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