罅割れた翡翠の映す影
目次|過去は過去|過去なのに未来
僕に心なんか無い。 僕はただ命じられるままに動く機械だから。
だから、そんな名前など呼ばないで欲しい、 心が在るように勘違いしてしまうから。
人間として生きたい君の、一番の障害は僕だろう? 心おきなく破壊して欲しいんだ。
僕が感情無く動く度に、 子供が泣いていて、 男が自殺をほのめかし、 女が自分を傷つけて、 少年は狂って何もかもをぶち壊しに掛かろうとしている。
僕は過去でしかない。 そうしなければ自分を保てなかったこの身体の過去でしかない。 もう君は僕が機械的に動かなくても自分を保てるだろ? 君が『完璧など在り得ない』事を知った時から、 僕は矛盾した存在として君にストレスを与えるだけになってしまっている。
僕に付けられた名前。 斜陽の中、一時だけ輝く星を司るモノの名前。 それを少しもじって付けたんだっけ。 そう、僕が存在するのは一時だけで充分なんだ。 夜が来る前に、消えなければならなかったんだ。
もう僕の名前を呼ばないで。 朝が来なくなってしまうから。 僕が此処に留まりたいと思わないように。 僕の名前を忘れ去って。 朝を迎える為に。
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