J (3.秘密の恋愛)
9. これからのこと (16)
しかし、、。
別れ際の最後の最後に初めて聞く愛してるの言葉は、 レイにどんな影響を与えるだろう。 もう思い残すことはない、そう言っているレイに、 刹那の想いを預けて何になろう。
そして俺は、愛してると言って別れると言う。 あまりに自分勝手な振る舞いじゃないのか、俺よ。
ああ、駅が近づいてくる。 高架になったその駅のプラットホームの人影が、 はっきりと見えるくらいに近づいてくる。
別れの時間はもうすぐ、だ。。
次第に足の進みが遅くなる、、私でした。
私の歩みが遅くなると、レイもまた私に合わせてゆっくり歩む。 ずっと無言で考え事をしながら歩いている私の隣で、 レイもまた何も言わず歩いていました。
往来には酔客がたくさん行き交っていて、 黙って歩くふたりの間の距離は変わらず、 腕触れ合うくらいのまま。
手を取れば取れる、肩を抱こうとすれば抱ける。 それほど近いふたり。
やがて。 私は足を止めました。 何かを思い出したように、。
・・
「レイちゃん。」
そうだ、君に言っておきたいことがある。 そんな顔をして私はレイに話しかけました。
レイも立ち止まり。 無言のまま「?」と私を見つめる。
「まだ、9時前だ、もう少しだけ、話、しないか? いや、何だと言う訳じゃないが、、。 このまま帰っちゃうのも、なんだか、物足りなくてね。」
レイはそっと私の顔を覗き込み、優しい目をして、。
「工藤さん、飲み足らないんですか?」 「いや、そういうんじゃなくって、、。 君ともう少しだけ、話をしたい、それだけだよ。」
レイはじっと私の顔を見て、。 少し考えた風にしてから。 私の目を見つめて、、、うん、と答えました。 そして。 「どこに行きますか?」と聞きました。
「そうだな、、。」
と言って私は上を向き思案する。 そこには夏の夜空が広がっていました。 ビルの間から小さな星がいくつか見えました。
キラキラと輝いて。
(9. これからのこと、の項 終わり)
|