J (2.結婚)
11. 変貌 (7)
会議室にレイとふたりきり。
「ま、ちょっと座れよ、」
私はレイの対面に腰かけ今またレイを凝視する。
そう、私は彼女とひとつになって彼女の中で果てたのだ。 されるがままにキスをされ、されるがままに包まれたのだ。 この服の下に隠れる柔らかな肢体、胸、乳輪、乳首、、、
鮮明に脳裏に浮びあがるあの生々しい記憶。 ああ、何と狂おしい夢!(参照こちら)
私がじっと見つめて黙っているので、 レイは、「どうかしましたか?」と不安そうな顔で私に尋ねました。
レイは私の心の中を知らない。 まさか自分の裸体を私が想像しているなんて夢にもないこと。 大方髪を染めたことに対する注意をされるのであろうと、 うすうすそんなふうに考えているような顔つきでした。
・・
「いや、話って言うのはね、その指輪のことなんだよ。」 慌てて指輪を隠すレイ。
「すみません、つい、うっかりしてました。」 「うっかり?、なんでも2〜3日前から嵌めているそうじゃないか。 髪の毛を染めたり、なんかしらんが香水をふりまいたり、、、 レイちゃん、いったいどうしたんだい?何か変だよ、今の君、」
「変ですか?だってみんなやっているじゃないですか、」 「そりゃそうだけどさ、なんだか急に、だからさ、」 「いけないんですか?」
レイは、いくらか挑戦的な表情をして私に質問しました。 その眼差しは深く真っ直ぐでした。 何度も目を合わせてはどちらかが目をそらしたふたりの視線。 、、、この時は私がそらしました。
この目を見ていると、今のオレはなんでも許しそうになる、、、。
夏季練成の時、あの海で見たレイの瞳。(参照こちら) この深海の奥より放つような光に包まれて、 今また私はレイの瞳の奥に引き込まれそうになっている。
私は目をそらしました。 そらさなければ、 再び封印しているレイへの恋愛の情が溢れそうでしたので。
私はタバコをくわえ、火をつけてその煙を身ながら答えました。 「いけないかって?、節度さえ守っていればそれでいい、なぜなら、」 私はそらした目をちらりとだけレイの顔に戻し、 「なぜなら君は営業部の人間だ、お客にも会う、身だしなみは重要だ、」 と諭すように言いました。
「これじゃ、いけないってことですか?」 「いいよ、だけど、指輪はダメだ、好き嫌いがあるからね、お客さんにも。」 「でも、」 「でも?、なんだ。」 「工藤さんはいいんですか?結婚指輪。」
、、、迂闊にも私は結婚指輪を嵌めていました。
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