J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年06月09日(月)    レイは私の心の中を知らない。

J (2.結婚)

11. 変貌 (7)


会議室にレイとふたりきり。

「ま、ちょっと座れよ、」

私はレイの対面に腰かけ今またレイを凝視する。


そう、私は彼女とひとつになって彼女の中で果てたのだ。
されるがままにキスをされ、されるがままに包まれたのだ。
この服の下に隠れる柔らかな肢体、胸、乳輪、乳首、、、

鮮明に脳裏に浮びあがるあの生々しい記憶。
ああ、何と狂おしい夢!(参照こちら


私がじっと見つめて黙っているので、
レイは、「どうかしましたか?」と不安そうな顔で私に尋ねました。

レイは私の心の中を知らない。
まさか自分の裸体を私が想像しているなんて夢にもないこと。
大方髪を染めたことに対する注意をされるのであろうと、
うすうすそんなふうに考えているような顔つきでした。


・・

「いや、話って言うのはね、その指輪のことなんだよ。」
慌てて指輪を隠すレイ。

「すみません、つい、うっかりしてました。」
「うっかり?、なんでも2~3日前から嵌めているそうじゃないか。
 髪の毛を染めたり、なんかしらんが香水をふりまいたり、、、
 レイちゃん、いったいどうしたんだい?何か変だよ、今の君、」

「変ですか?だってみんなやっているじゃないですか、」
「そりゃそうだけどさ、なんだか急に、だからさ、」
「いけないんですか?」

レイは、いくらか挑戦的な表情をして私に質問しました。
その眼差しは深く真っ直ぐでした。
何度も目を合わせてはどちらかが目をそらしたふたりの視線。
、、、この時は私がそらしました。


この目を見ていると、今のオレはなんでも許しそうになる、、、。

夏季練成の時、あの海で見たレイの瞳。(参照こちら
この深海の奥より放つような光に包まれて、
今また私はレイの瞳の奥に引き込まれそうになっている。

私は目をそらしました。
そらさなければ、
再び封印しているレイへの恋愛の情が溢れそうでしたので。


私はタバコをくわえ、火をつけてその煙を身ながら答えました。
「いけないかって?、節度さえ守っていればそれでいい、なぜなら、」
私はそらした目をちらりとだけレイの顔に戻し、
「なぜなら君は営業部の人間だ、お客にも会う、身だしなみは重要だ、」
と諭すように言いました。

「これじゃ、いけないってことですか?」
「いいよ、だけど、指輪はダメだ、好き嫌いがあるからね、お客さんにも。」
「でも、」
「でも?、なんだ。」
「工藤さんはいいんですか?結婚指輪。」



、、、迂闊にも私は結婚指輪を嵌めていました。



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