誰かの支配下で育った者は、時がたちその影響下から逃れた、あるいは克服したとしても、ふとしたきっかけで、幼児のように、その狭い檻のなかに自ら入ってしまうことがある。心が箱の中に閉じ込められたように、その枠から飛び出せなくなってしまう状況。
箱から抜け出せない。 自らを萎縮させてしまったから。 わたし、今、言葉を言えない。 それは、しゃべれないんじゃない。機能的に口が開けないわけじゃない。 ただ、言葉を吐くことができないだけ。
じっと、じっと、口を結んだまま、黙る。 外界からの暴力から身を守る為に、心のうちに籠る。 それが唯一の自己防衛だから。
けどその沈黙の中で、外界への脱出道も同時に求めてる。 そして知っている、殻を破るのは自分しかいないと。 だからこそ、その勇気をゆるぎないものにするためにも黙っている。
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