2002年12月20日(金) |
BOOK OF THE YEAR |
勝手に今年読んだ本のベスト10を決めたいと思います。 ちなみに今年出た本ではないのでご了承ください。
こんなものを列挙できるなんて、今年は(自分としては) 結構本を読んだのだなあと感じています。 高校生の三年間は本当に吉本ばななくらいしか 読書をした覚えが無かったから。
それでも昔から書くことは好きで、 考えてみれば高校の頃は 読まずして書いていたわけ。 今では考えられないや。
しかも、以前の私は 「恋愛のことを書いた文章は軽薄だ」と思っていて、 全くそういうことにふれずして日記を仕上げるのが 信念だった。
だから中学の日記を読み返しても、 とにかく勉強のことばかり。 「誰に勝った、勝ってどうする」というようなことが延々と書いてある。 好きな子はいた筈なのに、気持ちの推移など、今となっては知ることが出来ない。
こういうねじ曲がった青春は送らない方がいいよ、15歳の皆さん。 (そんな歳のビジターはいないか)
話がそれました。ベストテンです↓
1.「海辺のカフカ」村上春樹 村上作品を読むと、必ず主人公の男性に恋をする。 「あんなやつどこにもいないよ」ってみんな言うけど、 そこが良いのかも知れない。
中野区野方、高松市、レディオヘッド、図書館。 限りなく私の日常に近い世界で物語は進行するのに、 読んでいる間、私はもう一つの日常を生きられる。
こういう読書は病的なのかもしれないけれど、 読書にそういうもの(世界)を求める人が多いから 村上作品は売れるのだろう。
2.「大人失格」 「この日本人に学びたい」 「永遠の十分遅刻」 「同姓同名小説」 松尾スズキ
******* 〜もうこれは漫画でいくしかないでしょうという頃に演劇に出会った。 十八の春である。
そして、一気に熱が冷めた。
子供の頃から十年近くも書き続けた漫画を私は投げた。 (実を言うとその後東京に出て印刷の仕事につまずいた頃、 最後の挑戦と二社の漫画出版社に持ち込みをしたことがある。 で、「何を描こうとしているのか分からない」と言われて完全にあきらめた。 初めて知ってから十八年(!)になるが、 演劇だけが私に「わからない」と言わない) (この日本人に学びたい)
この間。 私は明け方の四時に通り魔に襲われた。 家で酒を飲んでいたのだが、 たばこを切らせたので買いに出ようと表に出た瞬間である。 全く見覚えのない男に「待てこらあ!おめえだよ!」と、 血も凍りそうな形相で指を突きつけられたのだ。 恐怖に駆られた私は一目散に逃げ出した。 〜 幾人もの人を追い抜きながら、私は無意識のうちに 「コレハマンガナノダ」と念仏のように唱えた。 俺はロード・ランナー。俺はコヨーテ。 コレハマンガナノダ。 ♪コミック雑誌なんかいらない♪ コミック雑誌なんかいらない♪ 俺のほにゃらら(うろ覚え)マンガだから〜。
私はなんだかもう、笑えて笑えて。しょうがなくて。 (この日本人に学びたい)
****** 「世の中面白ければ真実なんかまちがってても良い」と 松尾さんは言う。 これだけ面白くて、 だめの代表のようで、それでいてだめ自体がだめでなくなっている人は すごいと思う。
「どうして松尾さんは、睡眠薬や降圧剤を飲まないとやっていけないんだろう?」 分からなかったので友達に聞いてみた。 「人を面白くさせるのは、そんなに面白い作業じゃないのかもね」
ロックミュージシャンのドラッグ漬けには共感できない私も、 松尾さんのは仕方ないと思うんだ。
3.「空爆の日に会いましょう」小林エリカ アーティスト、小林エリカの日記。 アメリカのアフガン空爆の日に、セックスレスで男のうちを泊まり歩く。 言葉の響きで「おしゃれ反戦でしょ」と思った方には 是非読んでもらいたいかも。 けっこうへなちょこで、壮絶だから。
4.「ルンルンを買っておうちに帰ろう」林真理子 林真理子のデビューエッセイを今更読んでいる私もいかがなものか。 これを読むと、れいこの気持ちがすべて分かります。 れいこに恋をしている人におすすめ。(よく書いた、自分)
5.「読者は踊る」斉藤美奈子 辺見庸「もの食う人々」は結局、 金をかけておこなった通信社の企画でしか無いという視点。 私が「共感できないなあ」と、 心で思っていても 口には出せなかった、数々の偉い本に鋭くつっこみを入れてくれる。
私が「サバイバー」という番組を嫌いなのは、 結局あのハングリー精神が、わざわざ作り出されたものだというくだらなさによる。
だったら飽食の日本らしく、「大食い選手権」のほうがまだいい。
6.「罪と罰」ドストエフスキー 純文学も入れないと頭悪そうだから。 これはほんと、読むのにものっすごく時間がかかった。
ロシア文学の解説本を読んでからのほうが分かりやすい。 そういう読書が正しいのかは分からないけど。 「悪霊」も買ってあるんだ・・・年内には。
7.「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」M・ウェーバー 偏差値上がってきたね。 友達にとっても分かりやすい解説をしてもらった後に読んだので、 大変面白かった。 ただ、注がひたすら多いのでしんどい。 ひとことで言うと、 「資本主義が日本でも、中国でもなくヨーロッパで生まれたのは カルヴァン派の予定説の影響だ」みたいなこと。 多分。・・・違ったらごめん。
8."St. Agnes's Eve" John Keats ゼミの。英語で読んだ。 イギリス19世紀に登場したロマン派詩人、ジョン・キーツの作品。 ロミオとジュリエットのよう。
ラブロマンスの原型にのっとっていて、 しっかり言葉の背景を探ると、とても面白い。
昔々の男女も 食事→音楽→ホテル の順番で恋愛をしていたそうです。
9.「ポパイの時代」赤田祐一 「”一般の読者”なんていない、マーケティングなんて必要ない。 ひたすら「自分たちが面白いものをつくろう」という雑誌が 黄金時代を築いたという事実。
実際現場にいたら、そんなに簡単なものでないのは分かるけれど そのあってほしいと思う、夢見がちな私である。
10.「スプートニクの恋人」村上春樹 「私たちが理解したと思っていることは誤解の総体に過ぎない」 というスミレの台詞が今も頭に残る。
同じ作家のものは二度と出すまいと思ったけれど、 本棚を改めて眺めると、この人の本だらけ。 読書不足だ。書いていて分かった。最初に言ったことと矛盾してる。
最後にまとめ。
あと二週間で、ひたすら本を読もう。 田口ランディや江国香織は本棚に並んではいても ここに書けるほど内容が残っていない。
それにしてもしんどい。 10冊絞り出すだけでこんなに苦労するなんて。 ほんと、努力が足りないです・・・はあ。
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