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2002年09月19日(木)

君は想像力を恐れる。
そしてそれ以上に夢を恐れる。
夢の中で開始されるはずの責任を恐れる。
でも眠らないわけにはいかないし、眠ればゆめはやってくる。
目覚めている時の想像力はなんとか押しとどめられる。
でも夢を押しとどめることはできない。



「〜目を閉じちゃいけない。
目を閉じても、ものごとはちっともよくならない。
目を閉じて何かが消えるわけじゃないんだ。
それどころか、次に目を開けた時にはものごとはもっと悪くなっている。
私たちはそういう世界に住んでいるんだよ、ナカタさん。
目を閉じるのは弱虫のやることだ。
現実から目をそらすのは卑怯もののやることだ。
君が目を閉じ、耳をふさいでいるあいだにも時は刻まれているんだ。
コツコツコツと。」

(村上春樹「海辺のカフカより」)


「海辺のカフカ」を読み終えた。

想像力。
この文章を読んだ時、最初に浮かんだのは
私がコンビニで御飯を買う度に、
誰かを飢えさせているかもしれないという想像。
資本主義のリンクだ。

想像したらきりがない。

気がついたら私はあまりに複雑な、
大きな渦に巻き込まれている。

想像したらきりがない。
とても辛くなる。
だから想像するのをやめる。

でも、やめたらいけないのだと思う。
考え続けないといけないんだと思う。

小林エリカという一人の女の子が、
アメリカのアフガニスタンへの空爆の度に他人のうちに押し掛けて眠り、
「夢日記」をつけるという変わったことをした。
ホームレス、セックスレス計画。
(「空爆の日に会いましょう」マガジンハウス)

彼女のしたことは誰も救わないし、意味があるのか分からない。
でも私は彼女の立ち位置にとても共感した。
何もすることができない時に、最大限のことを彼女はしたと思う。

本当の意味で想像するとはそういうことだろう。
爆弾でうちが亡くなってしまった人の気持ちが、
一千分の一くらいは分かるかもしれない。(という想像)



テレビには北朝鮮拉致事件の家族達が繰り返し映しだされる。
想像しなければならない、と私は思った。
彼等の気持ちを。

そして北朝鮮に、彼等と同じような普通の家族がいることを。

想像すればする程に、
私は一体何をすればいいのか、
誰の味方をするべきなのか全くわからなくなる。

テレビを消して、ミルクティーを飲みながら
オリーブを読みたくなる。
それでも全く変わらない毎日が続くことは分かっている。
だって明日もおにぎり買わなきゃ。
あ、洗濯しなきゃ。
彼はどうしてるかしら。

私は私のことで精一杯だ。
何をするべきか分からず、実際に何もできないけれど
想像し続けるのが、今の私の少なくともの義務だろう。

村上春樹がそのことを思い出させてくれた。


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