7時半過ぎに、あなたはうちに来た。
久しぶりの私服姿。
いったいいつ以来だろう。
ずっと会うときは仕事帰りだったから、作業着姿しか見ていなかった。
作業着の時は気が付かなかったけど、私服になると、10キロ増えたという言葉に納得してしまう。
服の趣味も変わっちゃったねと、少し年月の隔たりを感じる。
でも、そんな感傷もつかの間、すぐに、会えたことの嬉しさにかき消されてしまうのだけど。
夕飯のメニューは、いろいろ迷って和食にした。
あなたはおいしいと言って、食べてくれた。
私はなんだか胸いっぱいで、よそったご飯の半分も食べられなくて、お味噌汁も残してしまったのだけど、「じゃあ、俺にちょうだい」と全部食べてくれた。
すべてのメニューに関心を示してくれて、交際初めみたいな思いやりを感じて、感謝の気持ちが生まれる。
こんなに長い付き合いなのにね。
「料理、いつもこんなにきちんと作ってるの?」とか「部屋綺麗にしてるね〜とか言われて。
夫には注意されていることを愚痴ると「そうか?」と全然気にならないようで驚かれた。
夫のところはおふくろの味が強すぎて、私の味は認めてもらえてないし、掃除は整理整頓は好きだけど、埃に無頓着なので掃除はしてないと思われてるし、がさつとか生活音がうるさいとよく注意される。
相性なんだろうなと思う。
ご飯を食べて、アルバムを見て、出かけた。
夜景を見に行こうと計画していたので、「行く?」と聞いたら「おう」と言ってくれた。
どこがいいかな〜って迷ったけど、城山にした。
車を降りて、展望所まで手をつないで歩いた。
夏の夜は、カップルがたくさんいて、私たちもその中に紛れて、デートみたいと、状況をかみしめた。
それから、コンビニでお酒を買って、ホテルを探した。
あなたとお酒を飲むのも、久しぶり。
カラオケがあったので、歌った。
あなたに歌詞を聞いてもらいたい曲がいろいろあったのに、入ってなくて、今度はカラオケBOXに行こうと約束した。
昔々、あなたが「おまえのために」と歌ってくれた歌があった。
前川清の「花の時・愛の時」
ちょっと前にそのことを思い出して、なんて曲だったんだろうと題名を検索したんだけど、自信がなくて、これだったかなーと思うのが、「花の時・愛の時」だった。
どんな歌詞だったんだろうと検索してみたら、すごくいい歌詞で、これを私のためにと歌ってくれたの?と思うと、信じられない気持ちで、あなたに「前に歌ってくれた前川清の曲、なんて題名だったっけー」と聞いてみたら、「ごめん、思い出せない」と言っていたんだけど、昨日、いろいろ言っていたら思い出したみたいだった。
そのころはまだ、20代で、演歌なんて興味のない世代だったから、なんで前川清?って思っていたのだけど。
今聞くと、歌詞にしみじみとして、涙が出るくらい胸にしみる。
私は、松田聖子の「夏服のイヴ」を歌いたかったのだけど、入っていなくて残念だった。
そして、歌詞を聞いてねと、B’zの「Callng」を歌った。
「強い磁石に引っ張られるように気が付けば今も一緒にいる」のところで、画面を指さすと、「お前がいいと言うと思った」と笑われた。
私たちの歌っぽくない?と聞くとまぁねと言っていた。
「私たちのテーマソングにするが。手に入れて、毎日聞きなさいよ」と言うと、笑っていた。
ずーっと寄り添って、静かに話をして。
「今が一番私のこと好きなんじゃない?」と聞くと「そうかもな」と言われた。
だんだん下がるのではなくて、どんどん上昇している気持ち。
20年以上も続いている仲で、こんな気持ちになるなんて、不思議だね。
「私があなたのことを諦めないでずーっと好きでいてよかったでしょ」と聞くと「そうだな」と言っていた。
朝は、ちょっと早めにホテルを出て、朝のドライブをした。
あなたは、子供の用事で9時には帰らないといけなかったから。
いつもの港に止めて、海を見ながら、あっという間だったねと、しみじみと語り合った。
「だけどねー、私はやっぱり奥さんのことがうらやましいよ」と言ってみた。
なんで?という感じだったので、「ときめきはいらないの。あたりまえのようにあなたのそばにいたいよ。何の感情も持たずに、おはようとかおやすみとか言いたい。今度いつ会える?とかも思わなくていいし」というと、「そうか・・・」としみじみとした感じで、受け止めていた。
重い話も真剣に受け止めてくれる。
だけど、お前のことは好きだけど、嫁と子供が一番、離婚はする気はないと、かたくなに言われているわけではなくて、最近は、子供たちが大きくなって、手が離れたら・・・と思い始めていることが感じられて、私の心に余裕が生まれている。
「子供といる時は子供に夢中になってしまうけど、嫁と二人きりの時は、お前と比べてしまうよね」と言われた。
そこまで思われているのに、ネガティブな気持ちになるなんて、ナンセンスと思いたいけれども。。
欲深い私だよね。。
これからも、もっともっと時間を作って会っていこう。
その気持ちを受け止めて、私は幸せをかみしめて過ごしたい。
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