今週は、防衛省事務次官の人事問題が話題になった。小池百合子防衛大臣が、官房長官への根回し無しに、守屋次官を退任させ西川官房長を後任にあてると言い出し、それに対して守屋次官は山崎運営企画局長を後任にしたいと抵抗した。
この問題は、「政と官」「官僚支配」の問題の核心を象徴している。私はかねて「官僚は本来、政権の部下。大企業に例えるなら、首相が社長、大臣が取締役、事務次官は部長。政権がしっかりとリーダーシップを発揮すれば、部下たる官僚は従わざるを得ない」と言ってきた。官僚に対する、政権のリーダーシップ(指揮権)の源泉は人事権だ。自民党政権においては、その人事権(内閣が各省庁幹部人事を決定する)を自民党議員がないがしろにし、「人事は各省庁の事務次官が決定し、それを内閣が追認するだけ」という状況が続いてきたために、政権と官僚の本来あるべき上下関係が無くなってしまって、官僚が、場合によっては自民党政権を支配しているかのような状況になってしまっただけなのだ。
政権が人事権を発揮する場合には、当然のことながら、内閣(首相・官房長官・大臣)が緊密な連携を取り、内閣の人事方針を一方的に省庁に伝えるというかたちにしなければならない。今回のケースで言うなら、小池大臣が塩崎官房長官(その先の首相)と意思統一をしたうえで、守屋次官に伝えねばならなかった。それが、小池大臣から伝達を受けた守屋次官は、塩崎官房長官を味方につけ、官房長官は小池大臣を批判するようなスタンスを取った。首相はすぐさま、小池大臣と官房長官の対立を解消すべく動かねばならなかったのに、それを数日間静観したため、事態はますます混乱した。
自民党政権の、そして安倍首相のリーダーシップの無さ、官房長官と大臣の稚拙さを露呈した一件だった。