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【政府税調の所得税改革論点整理】 2005年06月21日(火)

 政府税制調査会の所得税の抜本的見直しの論点整理(中間報告のようなもの)が発表された。本文はこちら
 様々な控除(扶養控除・配偶者控除・給与所得控除など)の削減や課税単位(個人単位か夫婦単位かなど)など所得税のあらゆる論点について、いくつかの対立する考え方が併記されているものもあれば、一つの方向性を示唆する書き方(も遠まわしなのだが)をしているものもある。
 これらの議論は、私が10年前に主税局にいた頃とほとんど変わっていない。政府税調は首相の諮問機関だが、実際には財務省主税局が、大学教授などの有識者を集めて会議を行い(議論する課題は全て主税局のお膳立て)、報告書はすべて財務省主税局が書く。大雑把に言えば、政府税調の報告書という名のもとに主税局の意向を示している。その意向を尊重しつつ、最終的に決定するのは自民党税調だから、所得税に限らず、様々な税制の抜本的見直しは、ことごとく棚上げ、先送りされてきたのだ。
 自民党税調の罪は大きいのだが、しかし、財務省主税局にしても、例えば、所得税を議論する際にも未だに「妻は専業主婦」というモデルケースを検討材料に使う。今や共働きの家庭の方が多いにも関わらず。あるいは、子育て支援と言っても、「手当」となると歳出・予算の主計局の担当となるため手を出せず、せいぜい扶養控除を所得控除から税額控除へ変えるといった税の範囲内での提言にならざるをえない。
 また、今回の「論点整理」の方向性は基本的にはサラリーマンに対する増税なのだが、政府としては、増税よりまずは歳出削減(徹底的なムダ遣いの排除)を優先すべきなのは言うまでもない。
 更に、所得税の見直しも、税制全体の体系をどうするのかというビジョンのもとで行わねばならないのだが、そのビジョンがまったく無い。消費税の増税も最重要課題の1つだが、小泉首相が自分の人気を落とさないために「自分の任期中は消費税を上げない」と宣言してしまったため、何も出来ない。道路特定財源(ガソリンや自動車に関する税)なども、首相が「一般財源にすべきでは」とリップサービスを繰り返しながら何も実行しようとしないため、環境税を含め議論がストップしてしまっている。
 政府税調は、基本的なことをおざなりにした今の自民党政権や、省庁の中でも局ごとの連携が不十分な政府を象徴しているとも言える。 


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