家族進化論
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2018年04月15日(日) 学べ 実践へ

No sooner 〜 than ... という表現の成り立ちは、本来は比較の表現だったものが、

その形から少しずつ離れ、意味の上から、類似表現に乗り移るといった現象だ

とわたしは捉えてます。



前号で取り上げました慶應大学・商学部の入試問題(2017年)の出題に関しては、

出題者の英語に対する誤解であろうことはさておき、



こちらも先号で触れた『英語語法大辞典・第4集』(pp.746-747)が取り挙げた類の

現象、つまり、than を抜かして、no sooner 〜の表現が単にas soon as の意味と

して使われているように思われる現象は、言語変化を考える際に欠くことの

できない視点をわたしたちに提供してくれると思います。



No sooner had the cat seen me, she ran away.



No sooner did we land in Mile Hight City, I grabbed my little suitcase,

picked a cabby who looked like he'd drive extremely fast and said,

'Brown Palace. Please shake ass."(Erich Segal, Oliver's Story)



たとえば、学校文法が伝統文法に則って教えてきましたように、A as well as B と

言った場合、not only B but (also) A という書き換えになるのが本来の用法で、

つまり、Aの方が新情報(焦点)であり、重要なわけです。その証拠に、

A as well as B の表現は、A as wellのみで、as B を伴わないで使用することが

できます。



ところが、もうだいぶ以前からですが、A as well as B の表現がA and B の意味で

使われている例がとても多いと思います。as well asが単にandの意味で使用

されていることが多いのですね。



そうしますと、end focus(文末焦点)の作用が働き、いつの間にか、Bに新情報

(焦点)が来ている例がそれこそ多くあります。



その比率は、わたしが日常的に接する英語を観察していますと、言語使用の

レジスター(使用域)によっては使用の半数近くそうなっているように感じる

ことがあります。



ほかにも似たような現象はたくさんあります。上に再掲しましたNo soonerの例も

そういった現象の1つのように見えます。



「規範的(prescriptive)立場からは許されない時期を経過して、いつしか記述的

(descriptive)立場からは認められるようになり、さらには規範的立場からも

容認される」



ことはしばしば見られるという印象があります。



新しい語法や破格の語法がどのような運命をたどるかは容易に予測はできません

ので、今回、言及したno sooner に伴う用法も何十年か、あるいは百年先には

どのようになっているかわかりません。


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