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2003年09月20日(土) 脚のついたオリーブ



 1985年6月の誕生日、スペインマドリッドのカサ・ボティンにいた。ここは日本人アメリカ人他の観光客の集う料理店で、乳のみ豚の丸焼きが名物だった。北京ダックよろしく、かりっと焼けた皮を食う。今思えばこの豚がどういう種類のものだったかは闇の中。そのスペインの豚の話。
 
 普通、スペインの生ハムは、ハモン・セラーノ(セラーノは山と言う意味で「山のハム」白豚)と言われて、この生ハムは、イタリアの生ハムプロシュートより、塩味が穏やかで、噛みごたえがあって、向こうにいるときはかたまりを買って、旅先を持ち歩いて、ナイフでそぎ切って食べていた。それほど美味い。

 このスペインの生ハムの中でもハモン・イベリコ(黒豚)は幻の部類にはいる。生ハム全生産量の内2%しか生産されない。この豚のすごいところは、脂身が毒ではないところである。
 イベリア半島原産のこの豚が、ワインのコルクの材料になる、コルク樫の森に放牧され、ドングリを食べて育つために、脂身に、オレイン酸、ビタミンB群、ビタミンE、抗酸化物質が多量に含まれて、悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪を減少させ、善玉コレステロール(HDL)を増やす作用があり、血栓や動脈硬化を防ぐ効果がある。俗に、脚のついたオリーブともいわれている。

 …と前置きをしておいて、先日、贔屓にしている、レストラン・ルラションのシェフから、スペインのイベリコ豚をメニューに出すと、メールをもらった。
肝臓がフォアグラの人間が、脂身が全体の半分近く占め、おまけに、赤身の中までさしが入っているような豚を食うなんぞ、とんでもないと考えるのがふつうだけれど、上に書いたように、足のついたオリーブといわれております。喜んで昨日行って参りました。

 最近の豚は、沖縄(沖縄の人の長寿は豚食と関係が多分ある)・奄美・九州の黒豚を除き、鶏肉との間で、鶏肉ならと思って食っていると、鶏肉がカロリーが高く、豚が水っぽく味が薄いという、逆転現象がおこっている。

さて、食ってみた。この豚は、噂に違わず、しっかり噛めて美味い!!
これの生ハムが食べたくなった。フランスの牛肉内臓は今輸入禁止で、スペインのハムなどが今年の3月当たりから日本に入って来ている(月刊畜肉ニュース)ようなので、やがては食べられるかもしれない。
肝心要のイベリコの脂身、こくがありすぎて、いくらオリーブと呼ばれていても、ふだん粗食の身には、ちょっとたべられなかった。骨はしゃぶった。

これにスペインのフミーア(Jumilla)産で、アメリカのバーカじゃなかったワイン評論家パーカーが近年異常な点数をつけて、一躍表舞台に躍り出た、カーサ・エルミタ(caza de la elmita)の2001年の赤ワインがよくあった。
多分パーカが評価したのは、ここのボデガ(醸造所)が、アメリカの樽とフランスの樽を使い分けている事が、愛国心の琴線にふれたためではないだろうか。

 少し割高だけれど、レストラン ルラシオン(堺町姉小路南西)で イベリコ豚がたべられる。うまいで!
 
ヘミングウェイが通った店として知られ、代表作『日はまた昇る』にも登場する。酒蔵を改造。地下は、ワイン貯倉庫の雰囲気を残している。










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