■TRASH■

2002年02月04日(月) 電池とパチンコ玉

1年振りに来たコートには、1年前の思い出が3つ。

使い旧したボタン電池が2つ。ぱちんこ玉が1つ。

ボタン電池の1つは万歩計に入っていたもので、2回前の誕生日に換えたもの。
もう一つはポケットステーションで、ポケピ達を動かしていたもの。
ピンクのウサギ、可愛いラーヴと甘い蜜月を過ごした電池。
本当はジュンという名前だったんだけど、愛の使者なら”ラヴ”でしょうということで、名前を変えてあげたのでした。

銀色のパチンコ玉は、夜もとっぷり更けた空の下を走る電車の中を、ころころころ向こうにこちらに、軽い音を立てて転がっていたのを拾ったもの。

3つの去年の冬の忘れ形見は、ポケットに手を入れるたびに、ひんやりとした過ぎ去った冬を少しだけ連れ返してくれていた。

まだ結婚をしていなくて、
誇りっぽいベッドに、
きっちりと閉まらない窓からの隙間風。

本棚にもベッドの下にも枕元にも床にも、あらゆる所にわたしの心の方割れである本が、至るところに転がっていて。

それでも今年と同じような高い空に、月とシリウスがさんさんと輝く夜に生きていたこと。

そんな思い出の触媒は、今は会社の机の中。

手に触る感触が好きだったんだけど、定期入れを出す時に、間に一緒に挟まった電池が転げ落ちたりするので、とうとう置き去りにしてしまったのでした。

転げる電池を拾うことだって、面倒でもなんでもなかったのだけれど、人と一緒にいる時は迷惑をかけてしまうから。

定期入れを出す時もなにも気にかけなくてもすむし、煩わしい事もなくなったのだけれど、でも、懐かしい空気と、懐かしい思い出も思い出すこともなくなって。

飼っていた犬が、いなくなってしまった時に似ているなぁと思う。

まだ、電池とパチンコの玉は会社の引出しの中。
誰もいない真っ暗なオフィスで、ひんやりとその銀の体を光らせているんだろう。

また、持ち歩こうかな。


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