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日が落ちる前に、あなたはなんとか街へ辿り着いた。 大通りには色々な店が建ち並び、家路に着く人々や夕飯の買い物をする女達で賑わっている。 ここで宿を取ることもできるし、店に入りアイテムを求めても良い。 大通り外れには暗闇の色をしたテントから、光がちらちらと漏れているのが見える。
さあ、どこへ行く?
商店に行くなら327へ、酒場を覗くなら82、テントに入ってみるなら220へ進む。
ゲームブックって知ってますか?
サイコロ片手にキャラクターシートとにらめっこし、各フェーズに振られた番号を辿って物語りを完成させる本なのです。
各場所にちりばめられたヒントを集め、 現れた敵を倒し、 ダンジョンを迷い、 手に入れたアイテムを駆使して、 本の主人公となって冒険をするのです。
沢山傷を負ったり、罠にはまったりして力尽きると、最初からやり直し。 たいていの場合、ダンジョンや街の地図を自分できちんと書かないと迷ってしまうし、結構謎解きもシビアだったり、ヒントを捜すのが難しかったり、アイテムを取り忘れるとあっというまに死んじゃったりする。
かれこれ10年くらい前には一斉を風靡していたのに、急速に人気は下火になり、今は全くと言っていいほど見られなくなったこのゲームブック。
わたしは「火吹き山の魔法使い」とか赤い背表紙のやつを何冊か買って……、やっては挫折し、挫折してはやったりしていました。 そんなゲームブックが、このたびめでたく復活と相成ったのです。
こうして自己紹介をしてるのも、理由がある。なんといっても、ぼくは君なのだから、いや、この本の読者である「あなた」がぼくなのだから。
そう。
このページを読んだとき、あなたはぼく自身と化す。 身長一〇〇センチ、体重三〇キロ、毛むくじゃらの顔、大きな目、ちょっと利口で、一見気弱そうで、腕力はないけれど、でも勇気はある。 さあ、ぼくの足を使って、あなたは歩き始める。
右、左、右、左、そう、いいぞ。
……うん。これならばっちりだ、ぼくらは息が合いそうだ。
ちょとはしょってるけど、これが鈴木直人著「チョコレートナイト」の出だしです。
どうですか? わくわくしませんか?
ポポレイポラという、二足歩行をする猫のようなファジイ族の勇者となって、人間のお姫様を助ける為に冒険に出る物語です。
わたしはこの出だしをウェブ上で見て、誕生日プレゼントでもらうならこれだ!と、プレゼントにねだったのでした。
小さな本に、沢山の冒険が詰まっている。 そんなのをプレゼントにもらったら嬉しいじゃないですか。(わたしだけ?)
本当は初旬の発売だったのですが、延期に次ぐ延期でようやく昨日発売になったのでした。 ただし昨日は祝日で流通側の関係かなにかで、予約してもらった本屋には入荷してなくて、ようやく今日手に入れられた次第であります。
どうやら今回の本は、あまりメモの必要のない簡単設計になっているみたいです。 久しぶりの人の肩ならしや、初めましての入門にぴったりなようです。
それでは、わたしは勇者ポポレイポラになって、冒険の旅に行ってきます。
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