■TRASH■

2001年09月01日(土) 「かもしれない」

昼もとっくに過ぎて、今から支度して取る食事は、どっちかっていうとおやつの意味合いが近くなっちゃうんじゃないかしらん。
朝兼昼はブランチでしょ。
昼兼おやつはなんていうんだろう。

そんなことを思いつつ、付けたテレビから飛び込んできたのは「特番」の文字。
きらびやかなネオンと黒煙と44人死亡という文字。
新宿の歌舞伎町。
見なれた町のビルの一角で火事が起きたらしいことが、少しして把握できた。

ホテルニュージャパンよりもひどい惨事。らしい。

…いまいち、その言葉の重みに実感がわかないのはなんでだろう。
建物がほとんど無傷だからだろうか。
立ち上る黒煙が、それだけの犠牲者を出したにしては、憎らしくなるほど細いからだろうか。
凶悪事件が連続しすぎて、「火事」という「ある意味しょうがない」理由では心が痛まなくなったのか。
(これを書いている現在は、放火の疑いもあるそうで。
 それが確定すれば、また違う気もしますが)

どっちにしろ、どこかおかしくなっちゃったんじゃないかと思うわたしがその特番を見ていて思ったことは、「自分ならどうするか」ということばっかりでした。

まず、火事の場合、煙を吸うのはまずいです。
空気の流れもあるだろうけど、たいてい、空気は四隅に残ってるはずです。
壁が熱くなって寄れないかもしれないけど、まず四隅に移動するでしょう。

折り畳み傘を入れるために、コンビニのちっちゃい袋を持ってたはず。
それを口にあてて、その中の空気だけで呼吸すれば少しは持つ。
吐いた息でも、酸素は少しは残ってるはずだし。
たしか昔読んだ小説のヒロインが、そうやって抜け出したはずだ。
マネーロンダリングと、ハッカーの出てくるサスペンス物。
面白かった。タイトルは忘れたけど。

…でも。
それを知っていても。

窓のありかはわからない。
唯一の逃げ場の階段から煙が出てくる。

さらに三呼吸も吸えば、意識を失ってしまうという一酸化炭素。
突然襲い掛かるパニックに、多く見積もったってたかだか1分でそこまで思い出せるだろうか。
さらに、逃げ惑う人になにも注意を促すことなく、自分一人だけ冷静に対処できただろうか。

当たり前だけど、四角い部屋には隅は4つ。
ビニール袋も1つきり。

さらに、逃げ場がない状態。
わずかばかり延命できたとして。
それでどうなるんだろう。
例え窓があったとして。
4Fから落ちる勇気が出ただろうか?
落ちて、打ち所が悪くて、植物状態で生きることだってあることを覚悟して飛び降りられたか?

窓を開けて酸素を得た炎は、あんな小さなビルを食らい尽くしたくらいじゃ足りないくらい燃え上がるかもしれない。
襲い掛かる火を肌に、肺に受けるかもしれない。

一酸化炭素中毒で倒れたほうが、苦しまなくて楽かもしれない。
冷静でいられる分だけ、辛いんじゃないだろうか。

沢山の「かもしれない」

わたしがその場にいたら。
そう考えること自体、必要のないことかもしれない。
しょせん対岸の火事のことかもしれない。

家族から考えれば、一縷の望みにかけて、どんなことをしても、どんな状態でも生きていて欲しいのかもしれないけど。
でもそれは出来そうもないと考えてしまう自分がおかしいのかもしれないし。

でもいつだって助けて欲しいと祈りつづけていた心の傷は、そう癒されるものでもないし、助けなんてないという絶望も、払拭するにはあまりにも世の中は無常で人の力は無力だ。

あんまりな事件で、関東大震災の話をちっとも聞かなかった。
火災旋風。
何万人もの人をあっという間に奪う、炎の竜巻。
それかを避ける方法だって知っておかなくちゃいけないのに。
これはソースはわかる。
一条理希望先生。スーパーファンタジー文庫の「クリムゾン・インフェルノ」
地震が起きたら川に近寄るなとか。どういった状況にいるとまずいのかとか。

生にしがみつこうとして、逆に死ぬ方法も用意して。

いつだって楽に死ぬ方法を背負ってでしか、安心して生きていけないのはやっぱり間違っているのかな。

なんかやっぱりおかしいのかな。
それとも。
みんな一緒なのかな。


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