いかさんは菓子パンがつぶれないように、箱に詰めて持ってきてくれたのだが、その箱を開けてはパンを眺めて閉め、という行動を数回繰り返していた、という情報を入手した母が、「次、どのパン食べようかなと思うてたんとちゃう? あの子もいじましいねぇ」と父と話していたらしい。
数回と言わず、何回と開けてはパンを見て、閉めていたのだが、それはどれを食べようかなというわけではなく、母には「パンを見て幸せに浸っててん」と、説明した。
食い意地がいささか張っている私ではあるが、正直に、あれはパンを見るだけで幸せな気分になっていて、「本当はこのまま置いときたいねんけど、食べなぁ腐るし」と思って、食べていた。もちろん、賞味期限とにらめっこをしながら(多少過ぎててもかまへん、と思いながら)、選んで食べていたというのはある。
反面、いかさんは滞在中、私より早く起きて裏庭の芝生を見て、おそらく幸せな気分に浸っていたと思うが、お互いに、普段ないものを見て、幸せな気分を味わっていたと言ってもいいかもしれない(いかさん、間違いであれば訂正を)。
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