ネジャーティの研究室にいた中国人のホーミンと娘さんを夕食に誘ったので、スーパーに買い物に行った。店内で50代ぐらいの男性がニコッと私を見ていたので、ニコッとしたが、その男性が「僕のこと覚えてないんでしょ」というので、だれだか頭に浮かんだのと同時にその男性に「君の歯科医だよ」と言われてしまった。
アメリカにしばらく住んでいるが、アジア系以外はどうしても人の顔が同じに見えてしまう。「ウォーリーを探せ」の本ではないが、たくさんの人の中に知り合いがいてもわからないことが多い。日本ではそんなことはないのだが、、、。
夕食にはてんぷら、照り焼きチキン、インゲンの胡麻和え、お味噌汁を作った。 お味噌汁は初めてらしかったが、おいしいと飲んでくれた。てんぷらも初めてだったらしい。
食べていると、大学のワゴン車が来て、ホーミンが止めていた車の後ろにくっついた。実はその駐車場は下の階の人の駐車場だった。最近は全然いなかったので止めていたら、今日に限って帰ってきたらしい。メモを残して置けば、また少し離れたところにあるビジター用の駐車場に止めていればよかったなあと悔やまれるが、時既に遅し。ホーミンは切符を切られてしまった。
気を取り直して、夕食後、ホーミンにガイドブックや日本の写真を見せていたが、漢字がたくさんあって、その読み方を中国語と日本語で言い合っていた。似てるものもたくさんあって、ホーミンは意外な発見をしたように喜んでいた。例えば「記念館」は「(中国語では紀念館)ジーニェンクァン」、「料理」は「リァオリ」というような具合だ。音読みの漢字であればとても似ているものが多い。そういうわけで、日本人も中国語は勉強しやすい。
「かん」という漢字は「クァン」と発音するものがある。「館」のほかに「関」もあるが、この発音で思い出すのは、吉四六か何かのとんち話で、江戸に入った間者(スパイ)を言葉で見破る話だ。
「火鉢に火箸、やかん、どかん」を人々に言わせて間者を見つけようとするものだが、江戸の人は「火箸(ひばし)」が「しばし」になり、「やかん、どかん」が「やくぁん」「どくぁん」になるというもの。
役人が調べている間、一人ぶつぶついっている者がいて、吉四六(だったと思うが)がそれを見逃さなかった。その者はその場を切り抜けたように見えたが、吉四六がみかんを指して、「これはなんですか?」と聞いたら「みくぁん」です、といった。「みかんはみかんですよ」と言って見破ったと言うものだった。
だから、「くぁん」として中国から入ってきた発音がいつしか「かん」になったと考えるのが自然だと思う。江戸時代の話だから「かん」になったのはそう古くはないのだろう。うちの祖母は昔の仮名遣いで習っているから、「館」の仮名遣いも「くぁん」だったらしい。
漢字は奥が深い。
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