2003年03月20日(木)
 『警告どおり計画どおり』 佐野元春 with the Heartland (『悪者見参』)

NATO STOP STRIKES

これまでも苦難に満ちたサッカー人生だったはずなのに、
ピクシーはいつだって「スポーツと政治は別だから」と
何も発言してこなかった。

だからこそ「NATO STOP STRIKES」と書かれたシャツを
着ていたあの日、彼の声に出さない悲鳴がハッキリと聞こえた。


偉いひとが振りかざす大儀よりも、いつも真摯に
プレーしてくれるピクシーやペトロビッチ、マスロバルの
言葉の方が私にとってはずっと信頼できる重いものだったし

彼らのメッセージは、政治うんぬん以前の

「人殺しをやめてくれ」
「本当のことを伝えてくれ」

そんな、シンプルで当然の願いだった。

そして多くの情報が偏向報道であること、
アメリカの作った嘘が多くあることを教えてくれた。


木村元彦著『悪者見参』の中で、モンテネグロ人であり
空爆まではセルビアのミロシェビッチ元大統領を批判的に
考えていたマスロバルは、空爆時にこう語っていた。

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「今、ユーゴ国内でNATOが行っている
国辱的な宣伝活動を知っていますか?
セルビア語で書いたビラを空から撒いているのです。
『我々NATO軍は、ユーゴ国民は決して嫌いではありません。
あなたたちを愛しています。倒したいのはミロシェヴィッチ
だけなのです』と。全くわれわれを侮辱した行為です」

 あなたたちは単に独裁者に騙されてる可哀相な国民だから
救ってあげる―――この傲慢な態度は許せない、と
静かな口調で言う。
「われわれはただの無知でも、騙されているわけでもない。
『あなたたちを愛している』?
では橋を破壊し、工場を破壊し、市民を巻添えにしているのは
一体誰ですか。(中略)ブドバ(※マスロバルの出身地)には
軍事施設などないのに、いまだに攻撃を受け続けている」

 かつて大統領に批判的だったマスロバルは「今、私は
ミロシェビッチを全面的に支持する」と言い切った。そして、
「われわれは民族の誇りに決して嘘はつかない」
 つまり、ミロシェビッチを倒せる権利を有するのは
自分たちだけなのだと憤る。

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また、同じおせっかいが繰り返されている。

ニュースの向こうに、あの日のピクシーの
悲痛なメッセージが聞こえる。

私は「これが真実なんだ」なんて主張したいんじゃなくて
少なくとも一方的な情報を鵜呑みしないように
注意深くニュースをみよう、みて欲しい、そう思うのだ。

そして

「人殺しをやめてくれ」
「住居や公共施設を破壊するのはやめてくれ」
「本当のことを伝えてくれ」

政治問題うんぬん以前の、そんなシンプルで
当たり前のはずのことを、願わずにはいられないのだ。

こんな今だからこそ、機会があったらぜひ
『悪者見参』、読んでみてください。



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