2000年11月27日(月) |
新庄節美著「魔界病院の怪物」(小峰書店刊) |
読書日記その1(やれうれしや☆)
産経新聞の子どもの本欄の書評の関係で、送られてきた本です。 いつもあそこの書評はたのまれるとき、「この本とこの本とこの本がありますけど、どれがいいですか?」というふうに、記者のTさんから電話で希望を聞かれて、こちらが選書できるようになっています(一方で、わたしの方から、この本を書かせて欲しい、と、もちこむこともあります)。
今回は、もう一冊、評論社さんの新刊も候補に挙がっていたのですが、分厚いらしいということと、ドイツのファンタジー(何となく、わたしは苦手^^;)だということで、降りてしまいました。降りたといっても、わたしが書かないというだけで、ほかの、もっと立派な方が書くことになるかもしれないわけですから、むしろわたしが降りて本にとってはよかったかも。 一方、新庄さんの本は前から興味があったので、送ってもらったわけです。
さて。「魔界病院の怪物」ですが、「なぜか怪奇現象が多い町」が舞台の、子ども向け「Xファイル」のような娯楽冒険物語で、これがシリーズ第二巻。ただし、「X」と違って、怪談はないし、今後も登場しない予定らしい。 つまり、「怪しげな事件」が起きるが、「おちはSF」という話なのです。 子ども向け怪奇SF小説なわけですね。そのあたり、D.R.クーンツから、宗教とホラーを抜いた感じとでもいいましょうか? アクションシーンと謎解きのあたりが、とっても、モダンホラーな感じがします。 でも、思想は子ども向けに健全なんですね。これは、子ども向けだからと意識したというより、作者さんの性格がにじみ出ているんだと思います。
で、評価としては、おもしろかったです(だから、書評も書きました。つまらないときは、書かないもん。12月中旬ごろの産経新聞に載る予定です)。 不吉な赤い流れ星が落ちた日から始まった、怪物の出現騒ぎ。街をうろつく、あやしげな青い帽子をかぶった男たち。はたして街になにが起こっているのか? 真実を突き止めるために、廃屋と化した病院に忍び込む主人公の少年少女。そして出会った怪物の持つ、悲しい過去とは? みたいな話です。
気になった点ももちろんあります。伏線の張り方がフェアじゃないんじゃないかとか(このてん今日担当さんにきいたら、オチがばれそうなので、あとで削ったとか。うーむ。難しいところですね)。主人公三人の性格設定が、ちょっとステレオタイプなんじゃないかとか。なにより気になったのは、前半、間違った推理を主人公たちが延々と繰り広げていくくだりが、とにかく長い…。長すぎる。
でも、鉄条網でおおわれ、錆びたシャッターで閉ざされた病院に忍び込むあたりから、話は俄然盛り上がり、怪物の正体が分かったあとからはもう、本から目が離せなくなるので、子どもたちにはなんとか最後まで読んで欲しいですね。読後感が、とってもいいし。中学年以上の子から、お薦めの本です。 (余談ですが、わたしの書くものといろんな意味で傾向がにているので、村山早紀の本が好きな子は、この本とも相性がいいと思います(^^))。
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