CORKSCREW Diaries(米国編)
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2002年01月11日(金) アンコール・ワット紀行 その壱(2/1加筆 一日目終了)


カンボジアの朝は早い。
どうも僕は知らない土地に来ると眠れなくなる性質のようで、前日は朝の5時起きで長旅をしてきたにも関わらず、よく眠ることができなかった。ホテルのエアコンは古く、結構大きな音。時々ブーンと言った音が響く。何事かと目覚めてみると、なんのことはない、エアコンの音だった・・・なんてことは度々だった。どうも少しナーバスになりすぎているのかもしれない。久しぶりのアジアで、治安に対する不安もあったのだろう。

ともかくもカンボジアの朝は開ける。ホテルを一歩出ると眼前にはまさしくアジア的風景が広がるのだ。川沿いの道を行く現地の人々。自転車やオートバイが土煙を上げながら往来している。クラクションの音。人々の話し声、喧騒。ああ、僕はアジアにやってきた。この喧騒こそまさしくアジアなのだ。普段僕が忘れかけている。普段とは異なる人々が歩くのを見ているだけで、僕の心は躍る。

本日は決められたコースを日本語ガイドと回る。明日は一日フリーだ。
日本で申し込むカンボジア・ツアーだったのだが、申込者はどうやら僕一人だけだったらしい。いきなりガイド独占という贅沢な状況である。午前中はアンコール・トム、そして午後からはアンコール・ワットが主な行動予定だ。

参加申込者ゼロだったら実質個人でガイドを雇ってんのと変わんねえじゃんなんてちょっと嬉しくなるのだ。今回の日本語ガイドはポールさん。ポールで略してポーさん。専属ガイドと専属の車で観光するなんてまるで王侯貴族みたいだ。(言い過ぎかも知れん) 一緒の飛行機に乗った近ツーのツアーなんて17人とか言ってたもんね。17人でぞろぞろ遺跡を回るなんて考えただけでも恐ろしい。それが嫌だからツアーで旅はしたくないのだ。って団体行動が苦手なだけなのかも知れんけど。

アンコール・ワットに行く前にバンコク・エアウェイズのオフィスに行く。リコンファームを行うためである。結構このバンコク・エアウェイズ、キャンセルが多いらしい。リコンファームが必要な航空会社なんてすごく久しぶりである。機材も思ったより古くなかったのだけれどもね。日本人スタッフもちゃんといるみたいだし。それにしてもリコンファームまで気を遣って頂けるとなかなか恐縮なことこの上ない。

アンコール・ワットはシェムリアップの北にある。車で約20分ほどの距離だ。遺跡の方を目指してモトバイが何台も向かっている。う〜ん、昨日乗ったモトバイがかなり気持ち良かったから、モトバイはちょっと羨ましい。贅沢に旅を設定しすぎたかもしれないね。
遺跡の入り口にはチケットチェック場があって、まずはそこで入場パスを作る。三日間で40ドル。これは高いか安いか非常に微妙なものがあって、現地での物価の安さを考えるととてつもなく高いが、内容を考えるとこれでも安いぐらいだと思う。結果としては妥当ではないかと思われる。とにかく、これから3日間すごいものを見られるわけなんだから。ちなみに、入場券用の写真は、事務所で撮影してもらえるのでご安心を。
「smile! smile!」とにっこり笑顔で撮影するのだ。どの人の写真を見てもいい笑顔で撮れてます。ちなみに僕はと言えば、ちょっとはにかんだ微妙な笑顔になってしまった。これもまた旅の記念品だからね、大事にしたい。


初日の午前中はアンコール・トムに行くのがツアーの定番コース。まずは南大門からアンコール・トムに入る。アンコール・トムの四方には門が構えているのだけれども、ここ南大門が一番有名で、門の脇の像も大体残っている。(他の門の像は頭がほとんど無くなっているのだ)門の上には石仏があり、アンコール時代の遺跡にやって来たことを実感させてくれる。まあ、正直言って最初はぼんやりと見ているだけだった。やっぱり、そのすごさが分かってきたのは、午後に入ってからだったな。

午前中の目玉はバイヨン寺院である。石仏の顔がありとあらゆる場所に存在している。それは神々しくも有り、異様な光景でもある。すべてが石で出来た仏の顔と、真っ青な乾季のカンボジアの空のコントラストが美しい。バイヨン寺院の回廊の壁には、アンコール時代の人々の生活のレリーフが有り、それをながめているだけでも、当時の生活が窺い知れて大変興味深い。出産シーン有り、狩りのシーン有り。ワニに食べられている人もいたりしするのだ。それはいいのだがガイドのポーさんはやたらと進むペースが速い
。はっきり言って早すぎである。もう少しゆっくり見ましょうよ〜。と言うとゆっくり見させてくれるんだけど、気がつくとまた早歩きになってしまっている。お客が気ィ遣ってどうするよって感じである。バイヨンに行ったのはこの一日だけ。一番最初に行ったので、印象残ってるようで残ってない。今回は本当にじわじわと素晴らしさが分かってくるタイプの旅だったので、最後にもう一度だけ寄って、じっくりと見学したかったかもしれない。


さすがに観光のベストシーズンだけのことはあって、多くの人々が訪れている。日本人は勿論のこと、意外にも中国系が多い。英語を流暢に話す辺り、香港か台湾、またはシンガポールからでも来たのだろうか? 「Excuse me sir?」 なんて普通に言われてしまうと、「負けた〜」と言う感じになる。本当にアジア諸国で普通に英語が通じないなんて日本ぐらいであり、まあ東南アジア諸国は生活の為に英語を学ぶって感が強いものの、たぶん日本って外国人には旅がしにくいであろうことがおもんぱかられるのである。


そして空は溜息が出るほど青かった。雲一つない空だった。この美しさは行った人でないと分からないもの。乾季のカンボジアは比較的涼しく、雨も降らない。(涼しいとは言え日中は30度を超えるのだが) 曇ってばかりだったアイスランドのことを少しばかり恨めしく思ったのだった。


午前中いっぱいは都城・アンコール・トムを回る。ちょっと暑さにへばりそうになりながらもピアミナカス、ライ王のテラス、象のテラスを回る。正直、あんまり覚えていない。結局ガイドに付いて行くだけではなかなか心に残ったりしないものらしい。写真はいろいろ残っているんだけど。
ただレリーフは素晴らしかった。この素晴らしさは初日では理解できなかったかも。
今になってもう一度じっくりみたいと思ってももう遅い。今度カンボジアに行く時は、すべて自由行動にしてゆっくり廻りたいって思った。

 
とまあこんな感じで午前中は終わり、昼食の時間になった。昼食はチャオプラヤーと言うビュッフェ形式のレストランである。ビュッフェと言うのは好きなものが好きなだけ食べられる分ありがたい。暑さのせいかどうも食欲が無いのが痛い。ここは普通に入ったら6US$らしい。当然ここで食事をするのは僕だけで、ポーさんも運転手も待機である。6US$って多分現地の人にとってみればかなり高価に違いないのだろう。僕らにとってはそれほどでもないのだけれども。
 昔中国に行った時、上海から広州までの電車を一等寝台車で乗った。本来は二等寝台が希望だったのだが、一等寝台しか無かったのだ。中国人でも金持ちしか乗る事の出来ない一等寝台車の乗客専用入り口で、僕は中国人乗客に、「え? お前みたいな若造が一等寝台なんかに乗るのか?」 とすごくびっくりされたことがある。それも当然で、当時二十歳の僕が一等寝台に乗るなんてあちらの国の常識から照らし合わせたらおかしい。よほど金持ちとか権力者の子弟でないと乗れないのだろう。その時僕はジャパンマネーの強さに誇りを感じるというよりもすごく後ろめたさを感じた。本来なら僕のような学生(当時)がいられるところではないのだ。それを忘れてはならないし、奢ってはいけない。
 だから思う。現地の人にとって僕らはどのように存在しているのだろうか。彼らは、僕らを金づるにしか見ていない、なんてことは思わない。でも現実に僕は6$ものレストランで食事を取る。ガイドは外で待つ。この図式は仕方が無いのかもしれないが、僕よりも年長の人に対してすごく申し訳ない気がしてならない。下手すりゃ学生にしか見えない僕が、ガイドを一人で雇って遺跡を回っているのだ。おかしいと言えおかしい。一応それだけの収入は日本で得ているとは言え、そんな自分に多少憤りを感じてしまったのだった。

食事は美味しかった。やっぱりアジアご飯はぶっかけご飯。これに限るね。



そうして一度ホテルまで戻る。
午後は15時から行動開始。それまでしばらく寝る。熱帯の国の昼寝は楽しい。
夕刻からはまずアンコール・ワットに行くのだ。
僕は今回のたびを「アンコール・ワット紀行」と銘打っているけれども、実際に、アンコール・ワットというのは一寺院の名前であるに過ぎない。分かりやすくするために「アンコール・ワット」に統一しているが、アンコール遺跡群と言うのが正しいのかもしれない。ともあれこれから行くのはその「アンコール・ワット」本体で、世界一般でよく言われているアンコール・ワット本体である。

アンコール・ワットを初めて知ったのは小学生の頃のことだ。
当時僕は、どこの出版社が出したかは忘れたが、世界ノンフィクションシリーズに夢中で、その中にアンコール・ワットがあったのである。確か初めて読んだのが「ツタンカーメンの秘密」だったような気がする。まあともあれ、ジャングルの中に石で造られた壮大な寺院が見つかったという話は、小学生の僕にもわくわくするような話だった。


そのアンコール・ワットに、今僕は来ているのだ。
両親や妹もやって来た。そして僕もここまで来た。
世界の果てまで行った時とはまた違った想いがある。
ずっと来たかったこの地に、僕はやって来たんだ。
じっくりと味わいたい・・・なんて思ったものの、やっぱりポーさんは早足で進んでしまったのであった。いや、スケジュール通り行かなきゃ駄目なのは分かるけど、もっとゆっくりしてよ〜と思ってしまったのは言うまでもない。ただ、遺跡に至る道にはすごさに圧倒される。悠久の時の流れをくぐりぬけてこの遺跡は聳え立っている。かつてジャングルの中にあった遺跡は、今は整備されて僕の前に姿を見せている。
自然とは別の、人の造りしものとしての存在感がそこにあるのだ。
だから見事というほかはない。
彫刻のひとつひとつをゆっくりと眺めていたかった。
時間の関係で端折ってしまったのが残念だった。
描写は少ないのだけど、これは写真を見てもらった方が早いと思う。
残念ながら、コトバじゃ表現し切れない。
僕にそこまでの表現力は無い。たぶん写真でもそのすごさを100%を描写し切ることは出来ない。
けれども、出来得る限りのことは書きたいと思う。自分のコトバで、素直にね。



アンコール・ワットはそうしてかなりハイペースで回ってしまった。まあ仕方ない。アンコール・ワットには、また明日夕陽を眺めにくる事にしようと誓う。明日は何と言っても一日フリーなのだ。好きに回らせてもらおう。何処に行っても人が多いのは避けられないんだろうけど。

そしてプノン・バケンから夕日を眺める。バケン山である。標高70mの山って言うよりも小高い岡のような所、アンコールでの夕陽鑑賞コースとしては一番ポピュラーな場所だ。70mとは言え結構急な坂を登らなければならない場所で、(他の遺跡も割とそうなんだけど)お年寄りには少々キツいかもしれない。
象に乗って山頂付近まで登る事も出来る。3人乗りで15$。高いか安いかは人それぞれだろう。さすがに一番高い所は自力で上がらなければならないみたい。この辺金毘羅さんと似ていてちょっと面白い。最後最後は自分の力で行けって言うことか・・・。
決して広くは無い山頂には多くの観光客が群がっている。さすがに観光シーズンだ。夕陽が沈むまでの数十分を、まったりとした気分で過ごす。ここからはアンコール遺跡がよく見渡せた。さすがに聖地と呼ばれる場所だけのことはあるかもしれない。
沈む夕陽をビール片手に眺めると楽しかったかもしれないが、さすがに観光客相手の商売はボられるので、ジュースを飲みながら眺める。これでも十分に素晴らしかった。


一日目はこれで終了。ホテルに送ってもらって一日目が終わる。
帰り道の途中、「土産物屋に行きますか?」とか言われる。
・・・来たよ。実は土産物屋に行こうとか言われるのが一番困る。基本的にお金が無くて何も買えないからなのだ。まあとりあえず、行くだけ行ってみるか、と案内してもらう。まあいいさ、買わなければいいんだから。

案内されたところは、確かに一階は土産物屋だったが、二階はスーパーだった。
スーパーマーケット好きな僕としては大変うれしい。現地の文字で書かれたお菓子とかを眺めているだけでわくわくしてくるのだ。カンボジアはさすがにタイとかから輸入物が多い。ラーメンとかお菓子を買って帰ったんだけど、後で調べたらお菓子はUAE製だった。これにはびっくり。なかなか美味しかったけど。
スーパーマーケットで重要なのは現地の物価の目安を計ることにある。
缶コーラの値段を比較するだけで日本との物価の違いが大まかに分かるのだ。遺跡で買ったミネラルウォーターは1ドルしたのにスーパーで買ったら0.3ドル。ふざけてる。ということで3本ぐらいまとめ買いした。これで高いミネラルウォーターを買う必要も無い。ってポーさんに言ったら大笑いされた。金持ちJapaneseの割にはセコイかな? だけど不適正な価格で買うのもシャクだしね。賢い旅行者と呼んでもらおう。


と言う感じでホテルに帰る。
晩御飯は・・・どうしようか。ということでオールド・マーケットを歩く。食べるところは沢山あるけど、どれがいいのかは正直分からない。これはもう当たりはずれの問題になってくる。一度美味しい店に当たったら、そこに通ったらいいんだもんね。でオールドマーケットを往復してみて、スープドラゴンなる店に入る。
入った理由?
それは混んでたから!
「混んでいる店は美味しい」と言うのは韓国に行ったときのカンダナオユキの言葉であるが、まさしくその通りだと思う。それはどこに行っても大体当てはまるであろう。と言うことで入る。
ビールを注文し、おすすめの料理を頼んだ。魚フライにに甘いソースでからめて野菜と炒めたものだ。
味はね・・・まずくはなかったんだけど、ソースが甘すぎたかも。さすがに全部は食べられなくって、残してしまった。暑いからかどうも食欲が減退しているみたい。でもビールは美味しかった。暑い国で飲むビールは美味しいね。感動。そして隣では日本人観光客らしき人たちが鍋を食べている。!!!美味しそう。明日は鍋にしてみようっと。

で部屋に帰ってから、いろんなところに手紙を書いた。部屋では日本の衛星放送を見ることも出来たし、環境的には日本とあまり変わらない感じだ。手紙を書いてお風呂に入るともう10時半。明日は5時に起きてサンライズを見に行くので早く寝なければならないな〜と思いつつもなかなか寝られない。環境の違いってのは大きいのかも。普段の旅行はユースとかに泊まってるからなあ。中級とは言えちゃんとしたホテルに泊まるのは久しぶりだった。ゆえに落ち着かないのかもしれない。



















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