CORKSCREW Diaries(米国編)
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2001年09月16日(日) 001 WORLD END


001 WORLD END

アイスランドに行こう。そう言ったのは川上はんだった。
夏休みは欧州に行こうぜという話になっていたが、なかなか候補地が決定しなかった。
折角9日間も取れるのだから遠くに行かなければ勿体無い。
二人とも欧州は初めてだから、まあ最初は無難にロンドンとパリにでも・・・
と言うのはどうも無難すぎて面白味に欠けるような気がした。
そんな時に出てきたのが、「アイスランド」だった。
北極圏に近い国。火山と氷河の国。
日本で得られる情報はほとんど無い。
「地球の歩き方」でもアイスランドに割かれているページはごく僅かだ。
まさしく、世界の果て。しかしアイスランドはとても豊かな国だと言う。
素晴らしい。
本当に素晴らしい。
と僕は思った。
僕にはアイスランドに行くなんていう発想は全く出てこなかった。
ちょっとひねって、北欧なんて言う選択枝は見つかっていたものの、
アイスランドだけは無かった。
アイスランドに行こうと言った川上はんは凄い奴だ。
本気で僕は彼を尊敬する。
まさしくコペルニクス的発想の転換。
そう、アイスランドこそ、この僕が求めていたものだったのだ。

旅行はやっぱり個人旅行に限るって僕は思っている。
パックツアーは確かに楽だ。
それなりの効用は得られると思う。そう、8割ぐらいは。
個人旅行は違う。失敗したら大失敗に終わる。
けれども、上手く行ったらそれこそ150%のそんな効用が得られるのだ。
自分ですべて考え、決めて、行動するからそれだけのものを得られるのだ。
アイスランド紀行は、近年希に見るほどの大成功だった。
途中でさまざまな細かいミスとかも有ったけれども、
これほどすばらしい旅行が出来るとは思わなかった。
それは、ホテルも、レンタカーも、その日の行動もすべて自分たちで決めた。
お仕着せなんかではなく、自分で全て決めた。
少ない資料から、導き出した答えだ。
まあ細かいところは大体僕がやってたんだけど、
川上はんはアイスランドに行こうと言い出しただけで今回のMVPは決定。
それだけ、彼の発想は素晴らしかった。
僕の役目はその発想を具体的に実行することだ。
それも、旅のしやすい先進国と言うこともあってか、ほとんどすべてうまく行った。
自分で全て行動したから、かなり自信になった。
そう、それだけでも、今度の旅は良い経験だったと言える。


バンコク行きのタイ航空に乗るところから僕らの旅は始まった。
バンコク経由でまずはコペンハーゲンに行き、そしてそこからレイキャヴィークに向かうのだ。
なぜコペンハーゲンなんかでトランジットかと言えば、
コペンハーゲンで乗り継ぐのが一番効率よくアイスランドに到着が出来るから。
アイスランドは元デンマーク領だった、ってのはあるかもしれない。
長い長い飛行機の旅。世界の果てまで行くのだから、仕方が無いか。

バンコク行きのタイ航空は、日本航空との共同運航便と言うことで、毎日日替わりでJALとタイ航空の機体が交互で運行している。今回の行きは、運がいいことに、JALだった。
JAL! JALなんてもう二度と乗れないと思っていたが、まさかここでJALに乗れるとは・・・
ただ、機体は古かった。DC−10だもん。あんまり広くは無かったし。
まあ、さすがはJALだね。至れり尽くせり。当然の如く日本語は通じる。
バンコクまでは5時間。
テロの影響か、飛行機は空いていた。横になって寝ようとしたんだけど、やっぱり興奮してるからかな、あまりよくは寝られなかった。機内食は、鶏の唐揚げ。ご飯ものはもう欧州行ってしまったら食べられないだろうから、今ここで味わっておこうと思ったのだった。

そしてバンコクに到着。
ここまで5時間。5時間って言うのも長い! こんなに長い間飛行機に乗ったのも久しぶりだ。
しかしここからコペンハーゲンまではここまでの倍以上もあるのだ。
と思うと結構暗澹たる気分になった。長すぎる・・・

そして乗り換えだ。欧州行きのターミナルでは深夜と言うのに人でごった返していた。
隣のローマ行きには結構日本人が並んでいるが、こっちのコペンハーゲン行きには日本人はほとんどいない。大体バンコク−コペンハーゲンなんて言うマイナーな(あくまでイメージ)路線誰が乗るんじゃ!
と僕らはたかを括っていたのだった・・・

・・・が、それは甘かった! 飛行機はすし詰め状態でほぼ満席だったのだ。
空いた飛行機で横になって寝ながら行く! と言う僕の野望? はあっさり崩れ去った。
間抜けだ、あまりにも間抜けすぎる。
バンコク−コペンハーゲンなんてマイナーっぽいのにぃー!!!
と言う考えは実際に甘いみたいで、コペンハーゲンは北欧の玄関口として、結構重要な地位を占めているらしい。タイ航空とSAS(スカンジナビア航空)はスターアライアンスで業務提携もしているみたいで、バンコク−コペンハーゲン−北欧諸国と言うルートは結構あちらではメジャーなのかもしれない。
おそるべしコペンハーゲン。カールスバーグだけじゃなかったのね・・・

行きとは打って変わって今度は最新鋭の大きな飛行機だった。
が、搭乗時点で日本時間午前二時。もうかなりグロッキーになっていた。
早速夕食? が始まるが、当然そんなもの食べる気力など無い!
スチュワート(スチュワートなんてカンタス・オーストラリア航空以来久しぶりだわ)が
「おまえ本当に夕食食べないのかよ?」なんて聞いてきたけど。
ごめん、食べる気力なんて全く無かったわ。頭痛くて。
食欲魔神の僕がこんなんなるとは珍しい・・・それぐらいこのときはグロッキーだった。

しかし寝られない。
昔からスキーツアーのバスとかでも寝られなかった。
育ちがいいのさ、なんて嘘ぶいたりしてるけど、実際、横になんないと寝られないのだ。
今回は飛行機空いていないか期待したのはそのせい。
しかし飛行機はほぼ満席。しかも3つ並んだ席の窓側って言う身動きがきかないところに座ってしまった。辛い。結局数時間まどろむことしか出来なかった。どうしても座ったまま眠るって言うことって出来ないなって思う。

そうは言っても多少眠ることは出来た。
目を覚ましたとき、機体はイランかトルコの上空辺りを飛んでいるぐらいだったのだろうか。
空はまだ暗かった。
そして、星がとても綺麗に瞬いていた。
あんな綺麗な星空を見たのは、初めてかもしれない。
北斗七星・カシオペア・北極星 
遥か下の陸地では街の灯りがぼんやりと見える。
飛行機の翼の先では星が輝いている。
機内は数箇所のランプが点灯しているのを除いて静まり返っている。
アイスランドまでの道程は、まだまだ長いのだけれども、
この幻想的な光景を、僕は忘れることはないだろう。
それほどまでの綺麗な星空だった。


それから僕らは、機内で夜明けを迎えた。日本時間ではもうお昼過ぎだ。
なんだかとても不思議な感じがする。雲の上から見る朝焼け。
欧州は、もう目と鼻の先だ。


そして飛行機はコペンハーゲンに降りた。午前7時頃だ。天気は悪かった。外は曇っていて、今にも雨が降りそうだった。欧州って、なんか曇りって言うイメージがある。まさにそんな感じだった。乗り換え時間が一番短い便を選んだものの、ここでの待ち時間は4時間近くある。
勿論、4時間ではコペンハーゲンの町に出るには短すぎる。
で、アイスランド航空のカウンターがどうもよく分からなかったため、
ひょっとしたら必要なかったのかもしれなかったのだが、デンマークに入国することに。
デンマークの入国審査官のおばさんは厳しかった。あれやこれやと聞かれた。こっちはたった3時間の滞在だって言うのに〜。ついでに言えば入国しなくても多分乗り換え自体は出来たんだよね〜。今思うとだけど。なんせ違う航空会社乗り継ぐの初めてだったもので・・・

でもコペンハーゲンの空港はなかなか素敵な空港だった。
造りがお洒落な感じで。なんかとてもモダンな空港だった。
ちょこっと空港の外に出てみたり、空港に直結している鉄道の駅に行ってみたり。
空港と鉄道が直結しているのは非常に便利だ。
アジアの空港は基本的にエアポートバスを使わなければならないのが不便。
渋滞とかに巻き込まれるとえらいことになるし、空港から市内に出るときどの辺で降りたらいいのかが非常に分かりにくい。鉄道が一番だね。って思う。
まあもっとも関空みたいに遠くにありすぎても困るが。

そしていよいよアイスランド行きの飛行機に乗り込む。
アイスランドに行くためにはアイスランド・エアーに乗るしかない。
独占企業だね。
だからかどうか分からないが、いきなり飛行機は出発が遅れた。おいおいおい。
やっぱり競争がないとダメなのかな〜。
だけどアイスランド航空、日本じゃマイナーだけど、北米や欧州各国から結構飛んでいるんだよね。言うほどマイナーではないのかもしれない。
だけどアイスランドに行く人ってどんな用事で行くんだろう?

コペンハーゲンからアイスランドまでは約3時間。
大阪からソウルに行くよりも遥かに遠い。さすが世界の果て!
日本を出発してから一体どれだけ時間が経ったんだろう。
そして眼下にアイスランドの大地が見えた! 遂にここまで僕らはやってきたのだ。
長旅の疲れはもう限界に達しようとしていたが、僕の頭の中では期待でいっぱいだった。
今回の旅は、どんな旅になるのだろうか。
丸一日かかってここまでやって来たけど、だけど、まだ旅は、始まったばかりなのだ。











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