裕は
その後、新しい店に馴染む事ができず、
ついには「飛ぶ」と言い出した。
「東京辺りまで逃げれば捕まる事は無いと思う。
だから、みぃにも付いてきてほしい。」
そんな事を言われた。
今の店を辞めて裕に付いて行く…。
家族も友人達も捨てて裕に付いて行く…。
そんなの無理に決まってる。
そんな気サラサラない。
私は今の生活が好きだし
何より裕を好きじゃない。
「それはできないけど、裕の事応援してるよ。」
「何で付いて来ないんだよ。
他の女達はみんな俺が『飛ぶ』って言ったら『付いて行きたい』って言ってるのに」
「そんな事言われてもね…。」
大体、「付いて行きたい」なんて言う女達のうち、
本当に付いて来るような女は実際にはそういないだろう。
ましてや、それを私に言ったからって何も変わらないよ。
結局私は、裕を見送った。
裕は既にイロコイ使って好き勝手使っていたくるみと
そして、まだ16歳くらいのゆいを連れて東京へと旅立った。
裕は、新しい店に未収(ツケ)を収めていなかったから。
ある意味、店に借金がある状態だったから
店からも、そしてそのバックのヤクザからも追われる身になった。
でも、東京にいるなら、きっと大丈夫。
…東京にいるなら。
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