■2000年11月16日(木) ありさの虐待日記
ふと本屋で見つけた文庫本。昨年の秋,我が子を虐待している記録をHPに載せた母親がマスコミに取り沙汰され,大騒ぎになった「ありさの虐待日記」について書かれた本だった。 あのニュースは,結局,「事実ではありません」と,HPの作者本人が神戸市の役所に電話してきたために,あっという間に“解決”してしまったけれど,内容が内容だっただけに,かなり印象に残っていた。私はTVで報道されてからその話を知ったので,その時には,マスコミが騒いだことに驚いたレンタルサーバーが,そのHPを削除してしまっていて,見れなかったけど(ミラーサイトは,今回の本を読んでから検索して,見てみたけどね)。 もともと,私は何故か「児童虐待」について――虐待を行なってしまう親の心理について――興味があった。ささやななえ氏の描いた『凍りついた瞳』もずいぶん前に読んでいたし,子供の虐待死についての報道も記憶に残りやすい。学生時代,心理学方面に進みたいと思っていたせいかもしれないけど。 最初,ワイドショー的な取り上げ方をしているのかと思ったのだけど,かなり…いや,相当マジメで硬派な内容だった。作者本人に接触することは叶わなかったものの,厚生省,児童福祉司から心理療法士,小児科医にまでインタビューして,作者の“実像”に迫ろうとしている取材過程はおもしろ(興味深)く,勉強になる。資料もしっかりしているし,何より,「虐待日記」を作った“ありさ”という人を悪者にせず,むしろその身を案じてさえいる。しかし,ただ同情するのではなく,「あなたは間違っている」とはっきりと告げる姿勢は小気味良い。 この本は,単なる「こういう事実があり,それを検証する」というものではなく,ただただ“ありさ”という1人の――おそらくあまり幸福ではない女性への強烈なメッセージが込められていた。そこには,“ありさ”への思いやりと優しさがにじみ出ていた。 私は活字中毒者を自認しているけれど,もっぱら小説ばかり。特に,ともすると「かっこうのワイドショーネタ」と思われそうなドキュメンタリーものは苦手だったけど,それも取り上げ方次第なんだなぁ…と思った。これからも,少しはこういうのを読んでみるのも悪くないね。
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