西方見聞録...マルコ

 

 

ベルリン1933 - 2012年02月20日(月)

 ベルリン1933(クラウス・コルドン著理論社)を地元の図書館で借りて読みました。

 ドイツの児童文学だそうですが、ドイツの児童はごっつい本読むのう〜とおもって読みました。

 ヒットラーが台頭し、そして政権を握った年、ベルリンを生きた人々の群像劇です。その変わり行く、狂気に暗転していくベルリンを労働者家庭の次男坊の15歳のハンスの目を通じて描いています。

 第1章ではナチスを支持する人は(少なくともハンスの周りでは)少数派の変わり者だったのに、物凄い勢いでナチス支持者が増えていく時代の節目が描かれます。あるものは貧困から脱出しようと(職を得ようと、あるいは昇進を望んで)。あるものは劣等感を克服するために。あるものは拷問への恐怖から。

 そんな中、ドイツ共産党と社会民主党の2大政党の党派争いと失望が第3勢力であるナチスを育て、ノンポリの事なかれ主義がファシズムの増大を見逃してしまうなど今の時代に通じる様々なシーンが描かれています。


 この本は第1部ベルリン1919、と第3部ベルリン1945とからなる3部作の第2部だそうですが、日本語に訳されたのはこの本が第1冊目だったそうです。(残り2冊の日本語版も、もう出版されてる模様なので地元の図書館に入ったら読もうとおもいます)

 今の日本にはこの1933が黙示録的であることだ、とおもいました。

 とくにこんな意識調査(PDF注意)とかこんなことが、現実に行われようとして、それを行おうとする市長が人気だ、なんて聞いてしまうと。(意識調査のほうは各方面から批判を浴びて凍結されたようですが)

 作中、共産党員からナチス支持者に寝返った弟を語る作中人物の言葉がいろいろと重かったです。
「弟はただ信じられるものが必要なの。(略)信じるものを乗り換えるのは難しいことじゃない。自分の頭で考えることのほうがずっとむずかしいことよ」 

 


...



 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail Home