西方見聞録...マルコ

 

 

命の格差 番外編 エルモロの村で - 2007年03月11日(日)



 これから書くのは『ナイロビの蜂』で出てきたトルカナ湖の岸辺に住むエルモロ族の村で経験したこと。

 ケニアの北西部スーダンとエチオピアの国境にある砂漠の中の塩湖、トルカナ湖。その湖岸のエルモロ族が暮らすその村の人々は、トルカナ族みたくにいろいろと伝統的文化慣習を保持していて、ビーズじゃらじゃらの民族衣装にお饅頭型のわらのおうちに住んで、トルカナ湖で漁労したり、ヤギの放牧をして暮らしていた。

 マルコは休暇を取って観光客としてその村に行った。活動中の協力隊の友人が一緒に10人くらい行ったかな? 泊まってたヨーロッパ風のホテルで「先住民の村を訪ねてみませんか?」みたいなチラシがあってそれで申し込んで出かけたのだ。

 ボートに乗ってトルカナ湖を渡り、その村の近くに上陸して木の囲いの中のその村に入った。「入村料」としてカメラ1台250シリング、ビデオカメラ1台500シリングのお金が請求された。こんなローカルな地域ではかなり法外なお金だが、でもまあ近代化されてない先住民の村に入れる機会ってあまりないので、おとなしくお金を払って中に入った。割と珍しいことなんだが、子どもはみんな礼儀正しく外国人を見ても冷静で、積極的に話しかけてくる子どももいなかった。

 村の中を見て回ってると村の中央の広場の木陰にやっぱり伝統的だが少し大きめの小屋があった。中を見せてもらうと簡単な黒板にむかって就学前の子どもが20名近く座り、若いエルモロの女性がばっちり民族衣装姿で子どもたちに算数を教えていた。黒板の脇に時間割がしっかり書かれていて「英語、スワヒリ語、算数、音楽 伝統舞踊」などの教科が曜日ごとに書かれていた。案内をしてくれてた村の人に「ここは学校ですか?」と聞くと「正規のものではないんですが、学校に行く前の子どもたちに簡単な就学前教育をしています。あそこで教えているのはここ出身で中等学校を終えたので帰ってきてもらった女性ですが、彼女に頭の良い子、勉強に向いている子を選んでもらって、村の予算で遠方にある公立の学校(ケニアの学校は公立も寄宿舎付のボーディングスクールであることが多い)に頭の良い子だけ送ります。村のお金で学んだ子どもは出来るだけえらくなってもらって村や地域の発展に貢献してもらっています。選ばれなければ、村に残って漁をして村を支えます。」とのこと。
「村の予算ってどうやって獲得するのですか?」ときくと彼は笑って「さっきあなたたちが払ったでしょう?ここを訪れる観光客が出すカメラやビデオカメラの持ち込み料が子どもたちの学費になるんですよ」。

 子どもたちは名前を聞くとみんなフランシスとかエリザベスとか洗礼名を持っていて毎週日曜巨大なトルカナ湖の対岸からトラックが迎えに来て村中みんな連れて対岸の教会に運んでくれるんだって。

 自らの伝統的な生活様式を武器にしてグローバリズム時代と果敢に向き合う村の話。まあちょっと見ただけで詳しくはわからないんだけど、先住民の村って外から見るのと中から見るのとずいぶん違うなって思った。2年くらい住み込んで深く話を聞くともっと違うんだろうけど。



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