トーキョー・ハッピーデイズ
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2000年11月10日(金)  Realities of Life

 19:00に新宿で明子と待ち合わせた。
 タイムズスクエアの上層階で食事をした。
「年だからしょうがないとは思うけどさ。いい加減Excelくらい覚えてほしいんだよね」
「そんなのまだマシ。ウチの部長なんか漢字変換でつまづいてるんだから」
「それは重症ー」
 私はカルボナーラ。
 明子はペスカトーレ。
 初めての店だけど、味は気に入った。
 足元には新宿の夜景。
 ワインでほろ酔い。いい気分。
「でも美里に先越されるなんて思わなかったなあ」
 その話題に及ぶとどちらともなくため息が出る。
「考えちゃうよね。ウチの母親なんか『25には結婚してたわよ』なんて言うしさー」
「げ。そう考えるとまだ早いなんて言ってられないのか」
「会社の先輩なんてもっとすごくて、6人兄弟なんだけど、『あんたの年には全員産み終わってた』って言われたんだって」
「ひえー。それはショック大きい……」
 コワイ話だ。思わず私は考えた。
 ウチはどうなんだろう。
 今年50だから、確かに私は母が25の時に生まれている。
 なんと。初めて気付いた驚愕の新事実。
「美里、仕事どうすんのかな」
「忙しいからねー。続けるんだろうけど、子ども産むとなったら難しいだろうね」
「さすがに専業主婦はありえないよね。美里に限って」
「それは似合わない」
「私は無理だな。ずっと家にいるなんて、耐えらんない」
「私も」
 デザート登場。
 チョコレートシフォンケーキに、フルーツとクリームが添えられている。
「ジュンはどう? 紺野くんとうまくいってんの?」
「まあなんとか」
「結婚しちゃえば」
「まだ半年だよ」
「美里だって出会って1ヶ月でしょ。期間なんか問題じゃないよ」
「美里の場合は、相手が年上だから。社会出て2年じゃ、結婚なんか視野に入ってないよ、きっと。私だってまだ早いと思ってるのに」
「それもそっか」
「明子はどうなの? よく続くよね、名古屋なんて遠いのにさー」
「別れようと思って」
「なんで? なんかあったの?」
「別に……。うまくいってはいるけど。現実的に考えると、このままつきあってもって思うんだよね」
「遠いから?」
「うん、それもある。長男だし、早く結婚して同居しろって言われてるみたい。たぶん、このままいけばまちがいなく結婚すると思う。でも今はそういうの考えられないし、彼のこと結婚相手として考えると違う気がする」
「ああ、そっか……」
「なんかね。やっぱりどうしても今までとは違うよね。学生の頃はそこまで考えなくてもつきあっていられたけど」
 コーヒーが苦い。
 私なんて、まだまだコドモだ。
 時間は止まらず、私たちは確実に年をとる。
 それに伴って中身も成長するわけじゃないのに。
 それでも大人にならざるを得ない現実がある。


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