2001年08月04日(土) |
参院選記事のままじゃあれなので。 |
先日書いた団マチをのっけます。 何で書けたのか、とっつぜんにインスピレーションが、こう。な。 即興らしい簡素な短い文ですが、 何って一人称で団マチ描いたのはじめてっす。 団長の身勝手さが伝われば十分です(笑)
++++ ピアノソロ
「クロロ…あたしが死んだら泣いてくれる?」 「君が泣いたら、死んであげよう」 「ほんと?」 「うん、ほんとだ」
小さなころの思い出だ。 誰も知らない、二人の約束。
「はは。そんな約束したっけね」 まるでたった今思い出したかのように、あたしは笑ってみせた。 「なかなか気の大きいガキだったな、俺も」 クロロはふっと吹き出す。 二人がいるのはなんだか丸い建物の最上階。 ピアノバーがあってピアノがあって、あたしはカウンターに腰掛けて、クロロは向かいの椅子に座っている。 二人で話をするのはずいぶんと久しぶりだ。 そう、きっと、あの約束をした時以来なのかもしれない。 「お前さ…」 クロロがカウンターの向こうを見ながら言った。ウィスキーの品定めでもしてるのだろうか。 「何であのとき、あんな質問したんだ?」 そしてじっとあたしを見る。 気になってたなら、あのとき聞いてほしかったな。 あたしはそう思いながらも、表情には出さずにため息。 「ききたい?」 「ききたい」 「…クロロのこと大好きだったのよね」 言ってふうっと息をついた。 「とっても大好きで…ある日夢を見て」 「俺の夢?」 「クロロが死んじゃう夢」 あたしはカウンターから飛び降りた。何かじっとしていられなくなったのだ。 「目が覚めてから、泣いたのよ」 今、クロロはどんな顔してるだろう。振り向けばいいのに、あたしはピアノに向かって歩いた。 「…弾けたっけ」 「まさか」 あたしは答えてピアノを通り過ぎて、そこで立ち止まった。 ピアノなんか弾けない。 歌なんか歌えない。 あたしにあるのは殺人術だけよ、知ってるくせに。 キィッと音がした。 クロロが椅子から立ち上がったらしい。 てくてくと、こちらに歩いてくる音がする。 「あたしは」 「マチ」 「…なに」 人の話、遮るの好きだよね。 アナタの勘も結構鋭いよ。…あたし今、凄いこと言うところでした。 「俺が死んだら、泣くか?」 その言葉には、あのころ持ってた重みはまったくなかった。死を考えるのは、あなたにとって身近になったのね。 「…泣く」 つぶやいたとき、肩の後ろから二本の腕が回って、ぎゅっと抱きすくめられた。 「あの約束、今も有効な」 耳元で、ささやいた。 「泣かない」 あたしは言い直す。 「…泣かないっ」 あたしは、繰り返した。唇をかんで、眼を閉じる。
「俺もあのとき、マチのこと大好きだったよ」
やさしくも甘くもない、事実を告げる低い声。 そして肩から、心地よい重みが消える。
二人がいるのは、なんだか丸い建物の最上階。 ピアノバーがあってピアノがあって、あたしはピアノとクロロに背を向けて肩を震わせ涙を流す。 クロロは多分(見えないけど)さっき選んだウィスキーのボトルを開けている。 アレが空になるまでは、あたしはここに立っていよう。
あと少ししたらいつものあたしに戻ろう。 ずっと昔の思い出、二人しか知らない約束…。
+++ だから団長が身勝手なんだってば。
毎日素敵に塾生活しています。
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