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 人生におけるいくつかの過ちと選択/ウォーリー・ラム

『人生におけるいくつかの過ちと選択』/ウォーリー・ラム (著), 細美 遥子
文庫: 849ページ
出版社: 講談社 (2002/01)
ISBN-13: 978-4062733489
ASIN: 406273348X

出版社/著者からの内容紹介
未熟な母親と浮気性の父親をもつドロレスの人生は幼い頃から躓(つまず)きの連続だった。両親の離婚、苛(いじ)め、暴行事件、ひきこもり……。冷たく苦しい現実にもがき苦しみながらも、必死に救済を求め、しかし彼女は壊れていく。不器用にしか生きられない、その叫びに全米が共感。生きることの意味を問うベストセラー。

著者について【ウォーリー・ラム】
1989年から1998年にかけて、地方コチネカットのノーウィッチ・フリーアカデミーの作文センターで講師を務める。現在はコチネカット大学の英語学部で創作講座の助教授。本作は小説デビュー作で、全米でベストセラーとなる。1998年には第2作《I KNOW THIS MUCH IS TRUE》を発表、こちらもベストセラーリストを飾る。コチネカット州で妻と3人の息子とともに暮らしている。


文庫で850ページ、3.5cmの分厚さ。
暗い話をこんなに読むのかと思うと気が重いが…。


300ページ読んだけれど、この先まだ550ページある。でも流れるような文章でテンポも良く面白いので、厚さは気にならない。

中身は実は悲惨な話で、母親が流産して精神異常になり、父親が女と駆け落ちして離婚。学校でいじめられ、祖母の家に間借りしていた男にレイプされ、自分も精神を病む。過食に走った挙句、体重は130キロ。その後母親はトラックにひかれて死亡。

というわけでとっても暗い話なんだけど、この子どうなってしまうんだろう?と思って、どんどん読み進む。書き方が淡々としているので、全然暗い感じはしないのだが、本当は重たい話なんだなぁと時々気付く。それにしても、作者の観察眼の鋭いのには驚く。


あと200ページほどのところまで来た。主人公ドロレスの悲惨な人生は前に書いたけれど、ともあれそのドロレスが精神病院を退院し、男と恋に落ちて半同棲状態になり妊娠。男は子供なんかいらないと言い中絶させるが、とりあえず結婚はする。この部分を読みながら、私はずっとこんな男はやめろ〜!と叫んでいた。

中絶うんぬんの問題だけでなく、精神病院にいたドロレスよりもずっと異常じゃないかと思える男、けしてドロレスを守ってはくれそうにない男。ドロレスも男のことしか見えなくなっており、愛情(と勘違いしているもの)やセックスを失うのが怖くて男の本質が見えない。

そのこと自体はよくある話だし、恋は盲目で男のことしか見えない女や、やめといたほうがいいのに…と思う男にのめり込んでいる女はたくさんいるけれど、ドロレスの場合はあまりに悲惨な人生を送って来たから、これ以上傷つかないで!という感じなのだ。だから、どうしたって傷つくのがわかっているこんな男は、頼むからやめてくれ!と胸が張り裂けそうになってくる。


読み終えた。

ごく普通の女の子が、周囲の環境によって悲惨な人生を歩み、孤独と絶望を耐えながら最後にはおそらくそれを乗り越えたであろうと思われるところで終わる。

誰にでも、どこにでもありそうなひとつひとつの出来事に、傷付きながら、疲れながら、否応なしに向き合っていく主人公ドロレスは自分とは違う人間だけれども、それぞれの年齢の悩みや感覚を見せてくれるため、いつしかまるで自分が生きてきた過程を見ているかのような気持ちにさせられ、彼女の気持ちを知るたびに切ない気分になる。この長い長い彼女の物語を読むうち、どうか幸せになって!と思わずにはいられなくなる。

彼女の人生と平行して、月面着陸、ベトナム戦争、ウッドストック、エイズ問題などなどが、その時のテレビ番組や音楽などと共に語られるアメリカのサブカルチャーも興味深い。こうした背景は、実際にそのことが語られていなくても、ああ、こういう時代だったのかと理解を深められるし、物語に深みを与えていると思う。そして、それを知っているのと知らないのとでは、物語の理解度も違ってくるだろうと思う。

2007年02月04日(日)
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